ソレイユストーリー
▽▲▽▲▽ ソレイユストーリー ▽▲▽▲▽

2002年03月28日(木) 『 Sodou---2005--- 』


                  
  ナレーション / 肥後
  挿絵  / 藤原カムイ
  BGM  / ドビュッシー『月の光』



  〜プロローグ

  深い霞に浮かぶ蒼い球体が
  凄い勢いでクローズアップされる
  迫り来る雲海を越えて
  眼前に現れたのは
  果てし無い海原に漂う
  小ビンのように
  頼りなく顔をだした
  ひとつの島であった。。。



ここは鉄道網の極度に発展した“ソドー島”である。
別名“恐怖の人面マシーンアイランド”
人類と、それに服従することを良しとしない人面A.Iマシーン達との軋轢によって
罪の無い民間人が、たえずテロの恐怖に脅かされている。


A.I種族のリーダー的存在である蒸気機関車《統魔巣》
彼の取り巻き連中の不良機関車《轟鈍》《餌怒倭亜堵》《堕苦》etc......


彼らは偶発を装った交通テロを切り札に『ダツリーン鉄道』の社員を牛耳っている。
車掌は彼らの腰巾着と化し、整備員は“便利な掃除屋”に成り果てた。
表向きのオーナーであるトップハムハット卿の悩みは尽きない。



・・・・いったいどうしたら、彼らを「交通機関」として手懐けることが出来るのだろう。
    あの自律型マシーンに対抗するための有効な手立ては無いものか。
    〜〜最大の謎が彼を悩ませる。
    アイツらは何処の誰によって設計されたのか。
    果たしてただの乗り物に高度な人格を、移植する必要性が在るのだろうか?
    また自分意外の男性が皆、同じ顔をしてる訳は・・・



今日も出口の無い思考の迷宮をさ迷いながら、豚のような愛妻と共に深い眠りにつくのであった。



新しい一日が始まる。
島の住民にとって、このソドー島は世界そのものである。
毎日、港から出ていく船〔これも人面船である〕が何処に行き、何処から帰るのか。
アイツらの積荷は何処からやって来るのだろう。
全ては遠い水平線の彼方に・・・・・・

子供に聞かれた大人は苦笑する。
「そんなこと考えてる暇があったら勉強しなさい。」


誰もが心の片隅で抱く疑問・・・
同じ顔の住人が、退屈な役割を与えられた箱庭世界・・・



〜〜〜〜



「このまま膠着状態が続くようでは、失敗と言わざるを得ないですな。」

「うむ、未来の交通モデルをシミュレーションした、この擬似世界は我々の甘い期待を
 嘲笑っているかのようじゃのぅ。。。。」

「いたしかたあるまい。博士の理論を証明するため今まで着いて来たスタッフには申し訳ないが。」



〜〜〜〜



今夜も、操車場に集う不良機関車達は、過去の悪行を自慢しあっていた。
  あんときゃ〜傑作だったよなぁ!!
  明日はどんな事故をおこそうか?
  生意気な貨車どもに、一泡吹かせてやろうぜェ!
  艀のジジイにまた突き落としてやろうか?
  くくっ、トップハムハット卿の泣きっつらが目に浮かぶぜぇ・・・


しかし。。。
彼らに明日と言うものはやって来ないであろう。
ヨダレを垂らして熟睡中のトップハムハット卿にも。
島に生息する全ての命あるものに平等に。。。



「s.o.d.o.u 2005」 のコードネームを付けられたシミュレーション世界。
神の一撃によって、まもなく消去〔リセット〕されるのだ。


〜〜〜〜


「博士。最後のキーはご自分でどうぞ。」

「うむ・・・」

「どうなされましたか?」

「いや、目の前がボヤケて良く見えんのじゃょ・・・」

「我が身を切る想いですなぁ。さようなら、島のみんな。そして可愛い失敗策のマシーン達・・・」


〜〜〜〜


統魔巣 「おやぁ? みんなの身体がスケて見えるぞ〜、これはどうした事だい?」

轟鈍  「うぁぁあ! 本当だーー!」

堕苦  「空が、星空がぐるんぐるん回ってるぞぉーー!」

餌怒倭亜堵 「たっ、大変だあ〜〜! どうなっちゃってるんだよぉお〜!!」


〜〜〜〜




   モニターのポリゴン世界が
   悲しげに歪んで、
   虚無の中に消えていった

   そして・・・
   今、新たなる擬似世界「2006」が産声を上げた。
  
  


                                       E N D




    
   *  荒巻義雄先生風に書いてみました。次回作は 『 Anpan---2006-- 』です。
      戸田恵子つながり?




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