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2006年08月23日(水) さよなら!龍兄!

先日、龍兄が退職した。
びっくりした。この時期に自主退職とは、どうなっているんだ?だった。

何度も書いているので、ご存知の方も多いと思うが、
わたしの勤める会社は、基幹システムの入替を行う。
去年の今頃は、各社のプレゼン中で、どの会社にするか迷っていた。
そして去年中、ある会社に決まった。
じゅりちゃんでもよく知っている、大手の会社さんだった。

「一緒にがんばりましょうね」

11月の賞与の査定の時、龍兄は、確かにそう言った。
たっくんはハードが専門なので、システムに関しては龍兄とわたし。
おそらくカネの話は龍兄メインで、わたしがシステム・補佐が龍兄。

そんな感じになるだろうと。だからがんばろうねって。
そんなふうに、確かに、龍兄は言っていた。



そして年があけ、我ら業務課正念場の年。
この部署に入ってから、最も大きな決断をしなければいけない年の初め。

部長から会議の席上で言われた時、信じられなかった。

ありえない。ありえない。どー考えても、ありえない。
皆さんは30後半の男性が、これからその部署始まって位の、
ものすっごい大きな仕事が始まる時、その部署責任者が退職って、
信じられます? 考えられます?



「オレもね、理由がよくわからないんだよ」

もう40半ばの部長が、目を真っ赤にして言う。
部長だって、これからだ!って思っていて、頼りにしていたのに、
突然、退職を告げられて、動揺している。
いろいろと理由を尋ねてみたが、コレというものがわからない。

「理由なき、退職」

それは、上司の部長には混乱でしかない。

「やる気がなくなったって言うんだよね・・・・」
部長はわからないと言う。他になにか理由があると思うんだけど、と言う。

だが、じゅりちゃんには、直感的にわかる気がした。
部長より近い位置にいたじゅりちゃんと、そしてたっくんには、
うっすらとだけど、わかるような気がした。

「龍兄には、そういうところがある」

多分「やる気がなくなった」は、本当の理由だろう。
そんな気がして、怖かった。

なぜ、じゅりちゃんやたっくんが、そう思うのか?
それはここでは書けない。
だが、じゅりちゃんとたっくんが、部長に対し、
龍兄を病院へ!と強く懇願したことは、記しておこう。


「私が一番心配しているのは、やめた後、自殺しちゃいそうってことよ」
「そんなことないよ、大丈夫だよ・・・。オレも最初、そう思ったけどさ」

たっくんの最後の言葉に、ホンキで怖くなった。

微妙なところだった。本人には自覚がないように見えた。
その後、わたしは、人がゆっくりと精気を失っていくのを、机越しに見た。
恐ろしい数ヶ月間だった。



別の件でも、すごい不安だった。
これから行われる、システムの入替え。
猛烈に大変らしい、という話だけは、山ほど聞いていた。

たっくんには頼れない。たっくんの専門はハード関係だ。
部長だって、もう業務改善の業務から離れて、何年も経つ。
っていうか、部長、取締役の一人だし。
大きな流れの把握はしているだろし、最終責任は部長だけど。

でもでも、そーいうことじゃない。
細かいところは私が判断できても、やはり迷うことは多い。
そんな時に、龍兄はいつでも、アドバイスをくれた。
龍兄自身が判断できなくても、なにがしかのアドバイスをくれた。

だが、その人がいなくなってしまう。
一体ダレを頼ればいいんだ? じゅりちゃんひとりぼっち??


「本当に、ボクは責任感のない人間だなーって落ち込むんです」

龍兄が部長に言った言葉。

システム会社の人との会議の席上。
わたしとたっくんが、あーじゃこーじゃ言っている。
だが龍兄は、黙ったまま。4時間、黙ったまま。

「じゅりさんや、たっくんを見ていると、自分が情けない」

そうだろうか? 雑魚である私とたっくんは、思考に詰まることも多い。
そんな時、ふたりで龍兄を見る。隅の方に黙ったまま座る龍兄を見る。
「たすけてー!」という視線で見る。
すると龍兄は、的確な方針を示してくれる。
そんでもって、話はきっちりまとまる。

いい上司と部下の関係じゃねーか!!
相手のシステム会社の人だって、ずーっとそう思っていたと思うよ!
なんで、そこで自信なくすかな? いいんだよ、ソレで!!


不安で不安で、しかたがなかった。
龍兄のいない数年を考えていなかったから、急激に不安な年明けだった。

そして悲しかった。龍兄は社内の人とのコミュニケーションも断ち始めた。
林田さんなどが参加する、プロジェクトメンバー。
一度親睦会を兼ねて、地方参加者に仕事を早めに切り上げてもらい、
夕食を皆で一緒に東京でとった。
当然、幹事役は、我らが業務課である。

「行きたくない」と、龍兄は言ったらしい。
びっくりして理由を問う部長に、龍兄はこう言い放った。

「業務命令だと部長がおっしゃるなら、行きますけどね」

部長、また目を赤くしていた。わたしもびっくりした。
たっくんは、仕方がないから、オレらでがんばろう、と言った。
だが事前打ち合わせを怠っていたので、PJメンバーから、
「なぜ龍兄が来ないのか?」という問いに、
わたしとたっくんは、まったく違う仮病を言ってしまっていた。



結局、龍兄が退職する本当の理由というのは、わからない。
だが、現在、課長代理という地位にあり、
そしてシステム入替えに関する、現場の総責任者という立場。

そんな立場の男性が、もう40前の男性が、ありえるだろうか??



だがいつまでも、悲しんではいられない。
目の前にあるのは、龍兄のいなくなる未来。
その未来を、どうやって乗り切っていくか?ということだった。


「もう、頼らない!」

いつまでも助言を求め続けるじゅりちゃんに、龍兄の渇!

そうなんだよ。頼らないでもやっていける力をつけようと思ったのに、
やっぱり目の前の龍兄を頼ってしまう。

龍兄は自分を情けないと言うが、じゅりちゃんも情けなくて泣きそうだ。
どーしていつまでも龍兄に頼るんだ。

龍兄の後任者はいる。前総務課長で、PCに異常に詳しい人だ。
一応名前も披露しておこう。「ひゅーひゅー」だ。
前にグアムで、一緒にビリヤードした人ね。

だがPCに詳しいというのは、たっくんには心強いだろうが、
じゅりちゃんには、助けにならない。
なんといっても、当社で扱っている商品名すら、全部言えないワケだし。
総務のスペシャリストですから。
人事には詳しくても、ウチの商品までは、細かく知らんのです。
それでは、当社の業務の流れだなんて、しるよしもない。



ひとり立ちしなければいけない。


もう頼る人は、いなくなるのだ。
その都度、判断を仰いだりすることが出来る人は、いなくなるのだ。
いや部長もいるし、ひゅーひゅーもいるけど、龍兄と同じことは望めない。
責任はとってくれるだろうけど、でも、そういうことじゃないんだ。



龍兄からもらったものは、大きかった。

龍兄とわたしは、正反対の人間だった。
最初は「なんだかはっきりしない人だなぁ〜」と思ったけど、
後にそれが、慎重さの現れであることを、知った。

人に対しても、あいまいな言い方をするが、やはりそれも、
後に「相手を傷つけない優しさ」だと知った。

今でも実践している。
「相手がしゃべりたいだけ、しゃべらせる」

業務課に連絡をしてくるのは、システムの不具合による緊急事態の他に、

・なんらかのデータを要求してくる場合
・現行の業務の流れに不満があり、それの改善要求

他にも部署間の業務連携による、いざこざとか(笑)
あの人がちゃんと出来ていないから、こっちが業務上困るとか(苦笑)

そんなことも、あることはある。
最初は「この処理がうまくいかない」と言うが、
話をよくよく聞いてみると、部署間のモメゴトが原因だったり。

でもそれらも含め、改善してくのが、仕事だ。
もちろん人の感情もあるが、その感情を生み出しているのが、
ダメなシステムのせいであるなら、一大事だ。

だから、聞く。全部、聞く。
相手が15分話したいなら、15分聞く。
そんでもって、必ず改善策を考え出すし、調整にも入る。
例えそれが、数ヶ月先に結論が出そうなことでも、必ず、動く。

勿論、一方の話を鵜呑みにするわけにはいかない。
その相手の話も聞く。
九州と東京で、電話で1時間だなんて、ふつーにザラだ。


この「相手の話を全部聞く」というのは、龍兄に学んだ気がする。
それまでのわたしは、せっかちに答えを求めていた気がする。
「それは違うんじゃない?」と思ったら、速攻言っていた気がする。

だがそれは調整役ではないし、個人的な意見を述べたに過ぎない。
それでは仕事はうまく回らない、ということを、学んだ気がする。



龍兄に学んだことは、他にもいっぱいある。

最後は龍兄も、肩の荷がおりたのか? 大分明るくなってきていた。


さよなら。龍兄。

一緒に仕事が出来て、本当によかった。ありがとうございました。



追伸

龍兄は元気に生きているようです。
もう、次の就職先も、決まったようです。よかったです。


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