Juliet's Diary
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2005年06月10日(金) |
うるさい女とトイレットペーパー |
先日、我社に社長の長男が入社した。通称デ部長、Jrの兄にあたる人だ。 聞くところによると、大手銀行を退職しての、入社とかで。 みんな、ソレにも驚いていたけど、もっと驚いたのが、 Jrが長男でなかった、ということだ。じゅりちゃん、知ってたけどね。 だって入社した時、末っ子だ、兄がいる、って言ってたもの。
で、そんな兄、兄部長、と言っておこう、は、 内線電話でわたしと話すと、必ずしょっぱなに爆笑する。
”業務課のじゅりです””わはははは”
意味不明。じゅりちゃんも、仕方がないので笑ってみる。 しかし1回ならまだしも、毎度毎度だと不思議になる。 デ部長のJrは、わたしと同年だから、兄部長はいくつか年上になる。 ただし、じゅりちゃん位の年齢の女性が、なにをしてもかわいいと 思えるほど、歳は離れていない。せいぜい5歳くらいの差、40前だろう。
”なんかさぁ、兄部長が笑うんだよねぇ・・・”
仕事の合間に、たっくんに言ってみる。
”ねぇ、わたしの話し方、ヘン?”
気になって仕方がない。新入社員とはいえ相手は部長。 オマケに社長の長男、デ部長の兄。
ちなみに、社長の席に一番近い場所に座っているのが、 我上司本部長と、息子であるデ部長。その次がじゅりちゃん(笑) 問題の兄部長の父親と弟に、めっちゃ近い配置なのだ。
”別に・・・。ヘンじゃないっすよ”
たっくんがモニターを見ながら、面倒くさそうに言う。 まったく。男って、こういう時、ぜんぜん真剣に聞いてくれない。 ムカついたので、しつこく、しつこく、質問してみる。
”でもさぁ、笑うんだよ。毎回” ”気のせいじゃない?” ”そんなことない。まだ5回くらいしか話していないのに、5回笑われた” ”偶然だよ” ”違う。なんでですか?って聞いたら、また笑われたもん”
そしたら、たっくん。しびれを切らしたように、
”声、でかいからじゃないですか”
・・・・・・・・・・・・・。
実はであるが、じゅりちゃんは電話の声がでかい。 営業部に所属していた頃、”電話は元気よく!”が、合言葉。 オマケに、もともと声の通りが良いらしく、 普通に話していても、声がよく聞こえる、らしい(自分ではわからない)
何度か言われたことはあった。 営業が携帯から電話してくると”じゅりちゃん、声でかいよ!”と、 言われたことも何度かある。耳がつんざけそうだ(笑)と言われた。
しかし、である。そんなふうに言われても、気にしないじゅりちゃん。 なぜなら、営業部では、ソレがよいこと! ”うっさいよ!”と言われても、”はっはっはー!”と ぜんぜん気にしない。まったく、気にしていなかった。
”じゅりさんと携帯で話すと、ちょーびっくりするよ。 他の人と電話で話していても、じゅりさんの声で聞こえないことがある”
たっくんが言う。 多分、兄部長が笑っていた原因は、ソレのような気がする。
兄部長は、部長・年上とは言え、新入社員。 恐らくであるが、まだ遠慮があるのだと思われる。 しかしながら、電話の声はうるさい。
”困ってしまって、わんわん、わわーん!”
つまりだ。兄部長は、困ってしまって笑っていたのだ。
さすがに、さすがに、神経の図太い女、じゅりちゃんもショックだった。 相手がいつもの調子で”うるさいよっ!”と言っても(コレが普通) ”まぁ、いいではないですか、支店長!”と言える(支店長に?)
しかし、困らせてしまって、かつ、ソレを言えないでいる状態に しているのは、お笑いじゅりちゃんとしては、確実にいいことではない。
”できることなら、つっこんでほしかった・・・・”
泣き崩れるじゅりちゃん。驚くたっくん。
”そんなことないよ、大丈夫だよ” ”でもアナタ、今、うるさいって、言ったじゃん” ”うるさいなんて言ってない。声がでかい、って言ったんだよ” ”ごめんね。迷惑だったのね” ”いや、もう5年も一緒にいるんだから、なれましたよ” ”5年もガマンしていたの?” ”ガマンとか、そういうんじゃない。本当にヤだったら、言ってますよ”
なんかこうして書いていると、たっくんを困らせているぞ。 しかしながら、落ち込むじゅりちゃんに、たっくん名案!
”じゅりさん、コレを受話器に張ったら?”
たっくんが、パソコンのクッション材として入っていた、 黒い不織布を手にしている。どうやらコレを受話器のマイクの部分に張り、 その影響で、音声が小さくなることを期待しているらしい。
”でも、みんなへの迷惑は軽減できないよ・・・” ”そうだけど・・。でも相手への声は、小さくなるから。 2ついっぺんに出来なくても、1コは目標達成だよ”
そうか。たっくん、アタマいいね。 じゅりちゃんは、受話器のマイクの形に、布をハサミでちょきちょき。 両面テープで張ってみる。”ホントに張ってるよ”と、たっくんは 驚いていたけど、藁にもすがる気持ちなのだよ、コチラとしては。
数分で完成。たっくんに内線をかけてみる。 ”うーん”と、たっくん。わかんねーって感じです。 そりゃそうだ。だって、席、目の前だしね。
しかしながら、1歩前進です。 そして、電話についている内線表に”小さく”と書いた付箋を張る。 これで、受話器を取ると同時に、気をつけることが出来る。 じゅりちゃんは、作戦開始を高らかに宣言いたしました。
そして、数日後。
兄部長からは、一切、連絡がなかった。 しかし、効果は思わぬところで、現れた。 それは、札幌営業所長代理よりの、電話である。
”ずっと聞きたかったんですけど・・”と、彼女は前置きをする。 営業所長代理は、ちょっと年上のお姉さまである。
”最近、じゅりさん、変わりましたよね。 前より、ずっと、やさしくて、かわいらしい感じがするんですよ。 なんか、いいことありました??”
ものすっごい、興味津々で、尋ねてくる。
”いいことは、ないんですがねぇ・・・” ”えー? でも、すっごい違いますよ。 送られてくるFAXにも、ハートが飛び散っていたりして・・・・”
あぁ、送信案内に書いた、ハートのマークね。 あれは、ずっと昔から、やっていたんですけどね。 ただ、全国一斉配信の時は、一応遠慮して、やってなかっただけで。
個人宛のFAXには、必ずと言っていいほど、らぶらぶマークをつけてます。 相手に”あら、じゅりさん、わたしに(ボクに)らぶらぶね!” って、思って欲しいからです。 えぇ、わたしの趣味、っていうのも、ありますがね。
”じゅりさん! やめてくださいよっ!!” 地方営業所で、FAXの回線テストをするたっくんに送ったら、怒られた。 ”オレとじゅりさんが、らぶらぶみたいじゃないですかっ!!”
別にいーじゃん、同じ部署なんだし。 龍兄なんか、無言で捨ててるよ、そんなFAX。 まだまだ、修行がたりねーな。まぁ、それは余談。
”いえねぇ、そのハートは、別に意味がなくてですねぇ・・・” ”そうなんですかっ(るんっ!) 絶対、いいこと、あったでしょう!”
ものすっごい期待が、受話器の向こうから、伝わってくる。
”実は、うるさいって、言われたんですよねぇ・・・”
超気まずい沈黙。
”すみませんねぇ・・。ご期待に添えなくて” ”いえいえ。こちらこそ・・・”
いいのです。効果があった、ということが、実感できました。 そういうワケで、協力をしてくれた、たっくんにも報告。 ”すごいですねぇ。もう効果がありましたか!”と驚いていました。
”でもさぁ、前より、かわいくて、やさしくてって。 じゃ、今まで、どうだったんだよ!って、感じですよねぇ” と、笑うたっくん。
”・・・・。うるさいって。・・・・思ってたんじゃないの?”
今度は、たっくんと気まずい沈黙。 すまん。ツッコミに、マジで応えてしまったよ。それも墓穴。
そして先日、めでたく兄部長様から内線がありました。 今回は、兄部長は笑っていませんでした。
めでたし、めでたし。
でも、なんか、悲しいです。
追伸
社長に席が近いと、なにかとお使いが発生する。 大したことではないし、最近はなれた。 前は総務課がやっていたのだが、目の前の人のほうが頼みやすいものね。
実はじゅりちゃん、社長が自分の名前を知っているとは思っていなかった。 営業部にいた頃は、名前を呼ばれたことはない。話したこともない。 だが、管理に入り、目にする機会が多くなったのか? ある日、社長がわたしを呼んだのだ。
びっくりした、じゅりちゃん。 そして、マヌケなことに、驚いた拍子に、転びそうになったのだ。
くすっ、と笑う、社長。 つかみはオッケー!と思うOL。(←ココで、既に間違い)
要件は、当社の今月の売上結果についてだった。 まぁ、じゅりちゃんは、資料を渡して、説明しただけだけど。
それからしばらくして、また社長に呼ばれた。 ”じゅりさん、ティッシュ、くれや” 社長はどうやら、手をふきたいらしい。
じゅりちゃんは迷った。 じゅりちゃんの机には、ティッシュボックスは、ない。 あるのは、保険のおばさんがくれた、ポケットティッシュ数個。 そして、正方形のきれいな箱に入った、トイレットペーパーが、ある。
”コレ、便利ですねぇ” ”でしょう? トイレットペーパーだから、トイレから持ってくれば、 タダだし、好きな長さに切れるんですよ!”
龍兄も大絶賛の、このトイレットペーパーは、業務課では大活躍! 中の芯をとって、きれいな箱に入れれば、見苦しくもない!
じゅりちゃんは意を決して、トイレットペーパーの方を手にした。 社長だからといって、きれいなティッシュを渡すのは、 権威に屈したようで、じゅりちゃん的に、納得がいかない。
”あんた! 社長にトイレットペーパー渡すOLが、どこにいんのよ!”
母親に話したら、猛烈に怒られた。 ここにいるんだよ、そんなOL。アンタの娘だよ。 こういう場面で、一か八かで、トイレットペーパーを手にする、 この娘の勇気を、称えてほしいものだ。やっぱ”笑い”が大事よね。
”社長、トイレットペーパーしか、ないんですけど・・(大ウソ)” ”なんでも、ええわ。くれや”
しゅるしゅると引き出す、社長。 ちょっと、小刻みに笑っちゃうけど、真面目な面持ちの、じゅりちゃん。
しゅるしゅるしゅる。しゅるしゅるしゅる・・・。 しゅるしゅるしゅる。しゅるしゅるしゅる・・・。 しゅるしゅるしゅる。しゅるしゅるしゅる・・・。
大量のトイレットペーパーが、社長の前に築かれる。
”どこで、切れんのやっ!!” ”いや、社長、トイレットペーパーですからっ!”
おかしいと、思ったのよ。ものすごい量、出してるし(笑) さすが社長、関西人。笑いには、笑い返しかと思ったら、マジですか? 箱に入っていたから、わかんなかったのね。人の話、聞こうよ。
”社長、トイレットペーパーですから、どこかで切らないと・・・” ”どないして切るんや” ”じゃ、ココ、持っていますから、えいっ!と、引っ張ってください”
ぷちっ。
やっと、トイレットペーパーが、切れた。 ただし、どうすんだコレ、というくらい引き出され、山にもなっている。
”今度、トイレに行く時、使ってくださいね” とは、さすがのじゅりちゃんも、言えない。
席に戻っても、じゅりちゃん、背中の笑いが止まらない。 しかし、この笑いのシチュエーションは、それ以来、 けっこう頻繁に、訪れてくれる。面白くて仕方がない。
”じゅりさん、もう、ええで” ”はい、社長、引っ張ってください”
ぷちっ。
もう、じゅりちゃんと社長は、あうんの呼吸よ。
”おい、このテッシュ、ダレのや”
ある日、社長が近くのデスクの上の、ティッシュボックスに気がつく。
”あぁ、それは、○○部長のです” (デ部長ね。さすがに社長、父親の前では、デ部長とは言えない) ”そうか・・。××(部長の名前)のか・・・”
社長は自分の息子のティッシュに気がついてしまった。 もう、じゅりちゃんには、頼んでこないだろう。
ちょっと寂しいな、と、思った矢先。
”じゅりさん! いつもの、くれやっ!”
アンタ。自分の息子のが、目の前にあるだろ! ヒラのOLの持ち物から、奪うなよっ!(実際は会社のトイレットペーパー)
けれども、いつものように、しゅるしゅるしながら思う。 社長は、トイレットペーパーが好きなんだな。 そして、多分だけど、こんなことでもなきゃ、 あんまり、じゅりちゃんと話をする機会も、ないのだ。
しゅるしゅるしゅる。しゅるしゅるしゅる。 社長とヒラのOLの唯一の絆は、トイレットペーパー。
しゅるしゅるしゅる。しゅるしゅるしゅる。
今日もじゅりちゃんは、うやうやしく、 トイレットペーパーを、社長に捧げるのだ。 そして、そのペーパーを、ぷちっ!とする呼吸は、ダレにも負けないのだ。
OLとそんな関係を楽しめる社長も、なかなかいませんぜ。 勿論、社長にトイレットペーパーを差し出す、OLもね。
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