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2004年08月15日(日) 新撰組(山南脱走)

”法度で縛るしか、ねぇんだよ”
”オレは、こっちのヤツらに、どう思われても、かまわねぇ”

土方さんのアタマの中には、ひとつしかない。
強い、強い思いで、そのひとつに進んでいる。手段は選ばない。

もちろん、山南さんだって、その目的には、賛同しているし、
その為に、ここまで来た、という思いも、あると思う。
だが、それでも、離脱したいと、土方さんに申し出る。

”この国なんか、滅んでしまえ”

坂本さんとの話の中で、山南さんは考える。
この国が、よりよくなるためには、どうしたらいいのか?
そして、自分はそのために、なにができるのか?


もし、土方さんが、山南さんに、”オマエが必要だ” と、言ったなら?
土方さんの心にある、全ての気持ち。
目的ももちろん、山南さんに対する、思いまで。

だが、多分、ふたりはもう、相容れることは出来ない。

”あんたの進むべき道は、オレが知っている”

そう。土方さんは、知っている。
だが、山南さんには、それは受け入れることは出来ない。


情に流されやすい、と、伊東が評した、山南さん。
土方さんが、素直な気持ちを打ちあけたら、思いとどまったかもしれない。
長い時間過ごしてきた仲間であり、近藤さんから離れるのもつらい。

だが、一度は思いとどまっても、このふたりは、必ず、対立する。
必ず、どちらかの息の根をとめるまで、ふたりの戦いは続く。
それは、彼らが、情ではなく、それぞれの信念で、動いているからだ。

”近藤さんには、大きなことをしてもらわないと”
”みんな、かっちゃんに、ついてきてんだ”

目的は同じでも、方法が違えば、結論は変わる。
無論、達成時間も、変わってくる。

一度、互いに気持ちの上で、折り合いをつけても、
結局、いつかは、必ず、対立する。必ず、必ず、対立する。
あの時代に生きた彼らの信念、というのは、おそらく、
我々には、計り知れないほど、強うものに、自分は思える。
そして、次に対立した時、敗れるのは、やはり、山南さんだ。


土方さんは、自分の信念のためなら、人を殺せる。
あそこまで、近藤を立てての人だから、もともとは、情のある人だと思う。
だが、それを押し殺しての彼の信念は、自分を悪魔にするほどに、強い。

だが、山南さんは、違う。
彼は、自分の信念の達成のためとはいえ、人を殺すことをためらう。
”戦場では、ためらった方が、負けなんですよ、先生”
そう。
だから、次の戦いがあったとしても、負けるのは、絶対、山南さんだ。


あの時代で言えば、あの人は、弱い。
土方さん流の言い方で言えば、とても弱い。

”オレが、あんたの進むべき道を、知っている”

オレについて来い。
だが、山南さんは、自分の信念に従い、その手を振り払った。


今で言えば、退職、ということだが、あの時代では、命がけ。
男なら、武士であるなら、自分の命をかけて、その信念を貫き通す。

山南さんは、知っている。
こういう戦いでは、恐れることをしない、
土方さんの方が有利なのを、知っている。

だから、身を引きたいと。江戸へ戻りたいと。
そうして、一度、自分自身を見つめ、また道をさがしたい。
だが、もし、それを拒まれた時は・・・。



”ばかやろう!!”

土方さんが、地団太を踏んでも、もう遅い。
土方さんが投げた賽は、とんもない結果を、生み出した。

どれほど、土方さんが、山南さんを、必要としているか?
敵に回せば、足元を救われそうなほど、好敵手となる、山南さんだが、
それでも、味方にいてくれれば、これほど心強いものはない。

”ばかやろう!!”

裏切られた、悲しみと怒りが、伝わってくる。
土方さんの伸ばした手は、結局、山南さんは、とってはくれなかった。


”総司。お前が行け”

土方さんも、それには、逆らわない。
結局、山南さんは、土方さんの手は、とってくれなかった。
本来なら、土方さんには、煮えくり返るほど、腹立たしいはず。
でも、その気持ちもありながら、
結局、山南さんが、生き延びることを、望んでいる。

ものすごく、情の深い人、土方歳三。
その大きな気持ちの揺れが、見事に伝わってくる。



ゆるゆると、旅路を楽しむかのように進む、山南さん。
彼の気持ちは、もう、決まっているのか?

だが、それは、あまりに、ひどい。
人を殺すことを、それを悲しむ感情を押し込めている、土方さんへ、
最期のパンチは、自分の命で。
自分の命で、土方さんが心の奥底にしまった糸に、触れようとしている。


結局、本物の山南敬介の死は、歴史上では、謎のまま。
だが、今回の三谷版、山南敬介の死は、とても奥深い。

土方さんは、どうするの?
人を殺すことに、ためらいを押し殺す方法は、
死を覚悟した人間には、通用しない。

”あんたの進むべき道は、オレが知っている”

でも、山南さんは、その道は、イヤだって。

ひどいよね、山南さんは。
あなたが、あそこまで伸ばした手を、振り払い、
自分の命で、あなたに抗議しようとしている。
どれほど、あなたが動揺するか、わかった上での、この行為。

ひどいよね、土方さん。
さぁ、あなたは、来週、どうするのかな?



追伸

”ぜんぜん、覚えてはいないではないかっ!”
めずらしくも、大声を上げて。
”わたしが、悪かった”
って、すぐに、謝って。

いいねぇ。自分の過ちを、すぐに認めて、いえる男は。
山南さん大好き。あたしゃもう、本格的に、この人にほれたよ(ぽっ)


追伸2

”見逃してくれ”

あの時の、オダギリ斉藤の、”山南さんが?” という顔。
絶品です。


追伸3

明里との旅路は、最初で最期のデートであり、黄泉路への旅。
山南さんは、とても楽しそうで、穏やかだったが、
それでいて、覚悟を決めている、そんな雰囲気が、恐ろしく悲しい。


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