箱の日記
DiaryINDEX|past|will
ゴキブリが現れた
ドアの前で待ち構えるように
しっかり黒光りして
見間違いはない
さあ どうする
わたしは驚くだろうか
気持ち悪い と 呟くだろうか
それとも
踏みつぶさねば と意気込むだろうか
ほんの数秒が
何分もに感じられた
ゴキブリの側は「見つかってしまった」という
言葉にはならない反射を用意していた
その黒光りは
磨きたての靴、いやむしろ買ったばかりの高級革靴の光沢
なのに
きたないやつ と嫌われる
私にもこれまで幾度となく罵られたはずだ
無数の
数百万の 数千万の 人びとの 大嫌い
が向けられる
入り口前のゴキブリ
どうか
どうか どうか
玄関の方へは逃げないでほしい
|