箱の日記
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巡回の森
ヘルメットをかぶる ものが落ちてこないように じゃなくて 落ちてきても死なないように だいたい 人間ってのはそんなに丈夫じゃない 簡単なことで潰れてしまうんだ ぐにゃり と 安全靴には鉄板が入っていて ちょっとやそっとのことで つま先は折れない でも 森で木こりが斧を振りおろしたら いったいどうなるんだろう
ぼくらの地図には ここ危険、そこ危険と たくさんの印が打ってある だから そこここの赤いばってんをよけながら みぎへひだりへと歩きまわる のらりくらり 遠くから見ると まるで意気地なしの酔っぱらい
工場のなかはもうたくさん! 途中からはぐったり疲れ切って 汗ばんだゴーグルのなか ぼくは森のことを考えた 大木にぽっかりあいた穴にむかって クマが鉄の棒を動かしている 真っ赤な炉 ふり向いて「ここは危ないよ」 と教えてくれる ありがとう まわれ右をして ぼくは家に戻る 細い山道はだんだん暗くなって 心細くなるというもの それでもとにかく歩かないとね
終業のベルが鳴り響くと さわやかな音楽が流れる 香りはないけど、小鳥だとかの声もして ぼくはすっかり ほんとうに森へ行って来たのだと ゴーグルを外して家へむかう ただし ヘルメットはかぶったまま だから なにが落ちてきたって大丈夫 なのさ
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