まったりぐったり日記 メモ 夏古
2003年09月12日(金)  字は溜息(仮)、号を景麒と。
ガチャピンが恐い今日この頃。「記憶にありません」って(笑)
なんか景麒並に溜息ついてるわー。
あと30分したら病院へお出かけ。
そういえば、昨日のお月様はすごく綺麗だった。
赤みがかった金色で箱根山の上に大きくあって、幻想的だった。

■黄昏の岸 暁の天(十二国記)
読んでます。
泰麒が、泰麒が不憫で仕方ない!冬栄読んでからだから余計だよ…。
あーそれにしても、読めば読むほど黄昏は謎だらけだ。
なんで阿撰は戴を支配しようとするんだろう。
玉座が欲しいわけでもないし、民を哀れむでもないし。民は民でどんどん洗脳されてるし。
泰麒と李斉が戴に帰った後がものすごく気になる。
一体どうなるんだこれから…!
小野先生、私たち一般人に哀れみ(新刊ともいう)を施して…!(切実)
そろそろ限界が近づいてます…。
稚くなくなった泰麒の泰麒っぷりを見せてください。

■こころ
昨日はものすごいアツアツぶり(寂しいって、恋って…)を発揮していた沢朗さんと美佐子さんでしたが、今日は銀ちゃんと投網子だったな。
っつーか時々素に戻る小池栄子と阿部サダヲが嫌だった。
ダメだ。銀ちゃんと投網子なんだからさ、そこで素で笑うなよ。いまいち。


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「わたしは結婚なんて絶対しないんですから。顔も名前も知らない男の元へ嫁げだなどと。お父様なんか、もう知らないわ。わたしは自分で大切な方を探します」
ぶつぶつと口の中で文句を言いながら、この国の王女ティーナは窓の下の庭へと続く布を引っ張って結び目が取れないか確かめていた。
「ちゃんとくっついてるわね。よいしょっと」
窓に足をかけて布にしがみつく。
「せーのっ」
窓枠から両足が離れた。と思ったが、どうやら手が布からすべってしまったようで、足は布に絡みつかなかった。
「きゃっ」
悲鳴を出す前に地面に落ちた。……もっとも、地面ではなく人の上だったのだが。
「いってー!」
その声で、一瞬気絶していたティーナは目を覚ました。
「あっ」
「そうだ。おい、あんた! 大丈夫だったか?!」
がばっという音と共に、ティーナの視界に男の姿が映った。
「だ、大丈夫……」
「そうか、それなら良かった。起きあがれるか?」
そこでティーナは初めて自分が人の上にいると気が付いた。
「きゃっ」
慌てて起きあがって詫びる。
足とはいえ、人の上に落ちてしまったのだ。怪我どころではないだろう。
「す、すみません。あの、お怪我はなされませんでした?」
おずおずと聞くが、男は平気とだけ答えて起きあがった。
「ごめんなさい! わたし、下に人がいるだなんて全然気が付かなかったんです。本当に、お怪我はされてないのですか?」
「本当に大丈夫だって、気にするな。受け止めようとして潰れたのは俺だしな。すまん」
男はそう言ってぽん、と頭を触った。
その鷹揚な言い方も、王女の頭を撫でることもするような人物は、この城内にはいない。なにしろこの国で王女であるティーナの顔を知らない人はいないのだから。
よく見ると、男は20前後の歳で、兵士の恰好をしていなければ貴族でもなかった。見るからにあやしいというわけではなく、それなりの服装をして気品が漂っている。
貴族だったら、一度くらいは見たことがあるはずだ。しかもこんなに顔立ちが良ければ尚更。
一体どこから城内へ入ってきたのだろう。
「しかし、なんだって上から落ちてきたんだ?」
知らない相手に、家出をしようとしてますなどとは間違っても言えないのでしばらく黙っていた。
「落ちたってわけでもなさそうだな。布まで用意してたんだから。……まあ言いたくないならいいけどさ。俺はファス国のサーリだ。良かったら仲良くしてくれ」
ファス国と言ったら隣の国だ。なぜわざわざやってきたのだろう?
「ファス国から? なぜ?」
「家出してきたんだ。で、兵士にでも雇ってくれないかと思ってさ」
家出、とティーナは口の中で呟いた。
自分と似た境遇、それだけでなんだか信頼できるものがある気がした。
「あなたも家出してきたの?」
緊張が緩みきったらしい、つい言ってしまった。
「あなたもってことは、あんたもなのか。似たもの同士だな」
言ってサーリと名乗る男は笑った。
「もしかしてあれは家から抜け出すための布だったのか?」
そういってサーリは窓から垂れているシーツを指さした。
ティーナは頷く。
「あんたもそこまでしなきゃならないなんて大変なんだな」
サーリはちらりとティーナを見た。そして思いついたとばかりにぱっと顔を輝かせると、言った。
「なあ、一緒に街まで行かないか? 俺はまだこの国に来たばかりなんだ。案内してくれよ。いいだろ?」
ティーナはサーリの強引さに苦笑しながらもいいですよ、と言った。
忘れていたが、ここはまだ城内なのだ。兵士に見つかる可能性も充分ある。一刻も早く都へ行かなければいけなかった。


城のある都を歩きながらティーナはあれは図書館あれは公園とサーリに教えていった。
しばらくしてティーナが疲れたと言うのでカフェに入り、お互いに好きなものを注文した。
「そういえば、サーリはなぜ家出してきたのですか?」
家出の理由か、と彼は呟くとコーヒーを一口飲んだ。
「結婚させられそうなんだ。それで」
彼はそれだけ言った。
『結婚』と聞いてティーナははっとする。自分も同じ理由で城から出た。
「そう、そうなの……。わたしも結婚しなければならない。お父様が勝手に相手を決めてしまったの。だから家出をしようとしてたところ」
「そうなのか。で、あんたは行く当てはあるのか?」
ティーナは今初めて聞いたとでも言うように顔をあげてサーリを見た。
……行く当てなんて考えてなかった。
「なんだ、そんなことも考えてなかったのか。呆れたやつだ」
「だってそんなことを考える暇もないくらい怒ってたんですもの」
仕方ないのです、とティーナは少々サーリに八当たる。うーむ、とサーリが唸ってから一つの提案をした。
「まだ宿も決めていないんだな。じゃあついでだから、俺が止まる予定の宿に来いよ。ちょっと値段は張るけど、お嬢様のあんたならそれぐらい大丈夫だろ。俺の知り合いがやってるところなんだ。嫌なら嫌でいいからさ。どうだ?」
ティーナはしばらく目をぱちくりするが、サーリはいや、やっぱりそうしよう、と勝手に決めてしまった。
サーリは父と同じくらい、いやもっと強引な性格だがティーナは別に気にならなかった。きっとサーリは自分が嫌と言ったらそれを受け止めてくれるはずだ。それが漠然と分かっているからかもしれない。
「それになんだかあんた一人だと心配だ。何しろお嬢様だからな。またどこかから落ちるかもしれない」
「そんなことないですっ」
顔を赤くしながら抗議して、はたと気が付いた。
「お嬢様……?」
「違うのか? 城に住んでいるのは王族か貴族だけだと思ってたんだが。それにその服。そんだけ質のいいものはそこらじゃ売ってないからな」
「あ……」
「まあ貴族にしろそうでないにしろ心配なのは変わらない。それに安心しろ、お前みたいな子供には手を出さないから」
その言葉にティーナはむくれて反論した。
「……じゅ…く…です」
「何だ? 声が小さくて聞こえない」
「〜〜っ。16ですっ! わたしは子供ではありませんっ。なぜ皆そのようにわたしを子供扱いするのでしょう」
勢いよくぷんぷんと怒るティーナの向かいで、サーリは面食らった。
「じゅ、16?! それで?!」
「何か文句でもあるのですか?」
「や、ないけどさ。いやーそれで16ね……ぷっははは」
お腹を抱えだして笑いをとめないサーリに、もういいですっ、とティーナはぽいと横を向いてしまった。
「あ、あー分かった分かった、16歳16歳。そりゃあもう大人だな大人」
サーリにぽんぽんと頭を撫でられて、なんだか馬鹿にしてます、とティーナが感想を口にした後、そろそろ行くか、とサーリが話を逸らした。


カフェを出てしばらく歩いていると城の方から大きな音が聞こえてきた。数十もの人がこちらへ来ているようだった。
ティーナ様! ティーナ様! と叫んでいる。
ティーナはその姿を認めて、城の衛兵たちだと察した。きっと部屋から抜け出したことに気が付いたのだ。
サーリは近くでリンゴを買っていて、こちらの様子には気づいていない。どうにかしなくてはと思ったティーナは、サーリを呼んだ。
「サーリ! 大変、城からの衛兵がこっちに向かって来てます」
「ん? ――確かにあれは兵士だな」
「このままでは見つかってしまうわ。逃げないと」
「そりゃまずいな。よし、じゃあこっちに行ってみるか」
と、今までいたリンゴ屋の隣にある人気のない路地を、サーリが先に走り始めた。
路地は奥へ奥へとまっすぐ続いており、途中で一度左へ曲がったがここもまっすぐに道が続いている。
幸い衛兵達はこの路地の奥までは来る様子はなく、大通りあたりでこのような人相の方を知らないか、などと聞いているのだろう。
「サーリ、彼らに、見つかったかしら?」
走りながらサーリに聞いた。呼吸がずれそうになるのを必死にこらえる。
「どうかな。こんな細い道には、来ないと思うが」
声が途切れ途切れに聞こえた。
サーリはティーナがもうダメ、と思ったころにやっと走るのをやめた。
「ここまで、来なかったみたい、ですね」
はぁはぁいう呼吸をなんとか整えようとしながら、ティーナはうしろを振り返ったままサーリに話しかける。
「ああ、もう大丈夫だろう」
その言葉にティーナがほっとすると、サーリがしまった、と言った。ティーナが首を傾げると
「宿はさっきの大通りの反対側だったはずだ」
とサーリが続けた。
「まあ戻ればいい話なんだが……」
「どうしましょう」
まだ大通りには衛兵たちがいるはずだ。
「仕方がないが戻るしかなさそうだな。あんたこの路地には詳しくないだろう?」
「残念ながら詳しくないです。でも戻ることも出来ないわ。さっきの衛兵たちはわたしを探してたの。『ティーナ様』って名前を叫んでいたもの。城に連れ戻されてそのまま結婚させられてしまうのよ、きっと。それだけは嫌なの。お願い、あなたならどうにかこの場を切り抜けてくださるでしょう?」
知らない相手との結婚を考えてしまい、最後は半泣きになりながら必死にサーリに頼み込み、頭を下げた。しばらくたっても返事のないことに訝しみながら、自分より頭一個分ほども背の高いサーリを見上げた。
「どうしました?」
「驚いた。あんた、ティーナって名前なのか?」
ティーナは目をぱちくりさせた。
「言ってませんでしたか?」
「……それじゃあ本当にあんたがティーナなのか……」
「わたしのこと、知っているの?」
「知ってるも何も」
意味が分からないティーナはただサーリを見つめるしかない。
「すまない。少し驚いただけだ。……まさかあんたがこの国の王女だとはな」
「……」
「……ティーナと言ったらこの国の王女だろう。それにあんたは城にいた」


あーあ、なんでこんなことになっちまったんだ?
もうちょっと続けるか。
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