管理人の想いの付くままに
瑳絵



 代償(お題:18)

「URAKATA屋」番外編
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 代償


 そう、これは代償。
 選ぶことも失うことも出来ない愚かな私に降り注ぐ懺悔の痛み。


 瞳を見れば分かる、鈴理が誰を好きなのか。そして、その想いを伝えるつもりも無く、必死に感情を押し殺そうとしていることも。
 その事実が、とてつもなく胸を抉る。
「天音」
 名を呼ぶ幸せ。共に在ることの幸福。優しく触れる温もりを、失ってしまうことなんて想像出来ない。
 なのに、鈴理が諦めてしまうのが嫌なのだ。
 誰も知らない私と天音の関係。ばらしてしまえば良いのかもしれない。鈴理がそれを恨み、私を殺すなんてことは微塵も思わない。寧ろ、それが哀しいのだ。
 初めて人を殺した時に、全てを諦めてしまった鈴理。あの時の彼女の憔悴しきった顔が脳裏を掠め、居た堪れない気持ちになる。
「椛……」
 愛してる、や好きなんて言葉は貰わない。名前だけで良い。呼んでくれるだけで良い。
 でも、私はこの幸福をみすみす捨てる。いや、正確には捨てない。
 だって、私は信じてるから。天音が、生半可な気持ちで私を愛してくれているんじゃないってことを。だからこそ、安心して離れられる、待っていられる。
 今の彼に、私はどれだけ残酷な女に映るのだろう?
 見限られるかもしれない。
 信じているのに、消えることの無い不安に怯えてる。
「天音」
 どちらかなんて選べない。皆で幸せになりたいなんて、限りなく実現不可能に近い夢のまた夢。でも、失いたくない。
「やっぱり私達は付き合ってはいけないよ」
 胸が痛い。でも、これは代償。
 何も失いたくないと、そんな我が侭に対する代償だから。

「友人として、これからもよろしく」
 卑怯な私への、我が侭の代償。
 でも、代価を払うのはきっと私だけではない。私よりも天音の方が、鈴理の方が、重い痛みを患い、背負っているのかもしれない。



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「URAKATA屋」番外編
18.選ぶことも失うことも出来ない愚かな私に降り注ぐ懺悔の痛み
をしよう。「contend」05.秘密、の過去の椛サイド。
このお題で2つ目の「URAKATA屋」
短く、薄暗い・・・明るい話を書こうと思っているのに(泣)
またも独白に近いです。

お題8個目・・・頑張れ自分!

2004年02月29日(日)
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