|
|
■■■
■■
■ もう一つの意味(お題:14)
※「花よりも美しく、咲き続けるモノを・・・」番外編 ↑タイトルクリックで、小説に飛べます(別窓)
もう一つの意味
「雨、降りそうだね」 二人で映画を見に行った帰りに、不意に足を止めた彼女は、空を見上げて残念そうに言う。 朝、待ち合わせの頃から曇っていた空は、今にも泣き出しそうな濃い灰色の雲に覆われていた。
「本当だ、降る前に帰ろう」 「うん」 差し出した手に、自然に重ねられた手。 彼女の歩幅に合わせて、ゆっくりと、それでも心なし早めに足を動かす。せめて、彼女の家に着くまでに降り出さぬことを祈って。
「ねぇ、今日も幸せ上げられた?」 帰りながら会話する。この問いは、僕が毎日必ず彼女にする問いだ。 「まだ、今日はまだ幸せ貰ってない」 「え、映画は?面白くなかった?」 彼女の答えに、喜んでいたと思ったのは間違いだったのか、と不安になる。 「面白かったよ、でもそれは映画がくれた幸せ」 「……じゃぁ、今日のデート自体は?」 「それは、私が誘ったんだから、私が自分から掴んだ幸せ」 だから、今日はまだ僕から幸せを貰ってないという彼女に、逞しくなったな〜と感心せずには居られない。 彼女の家に着くまでの間、僕は彼女にどんな幸せを贈るか、懸命に考えた。 そんな僕の顔を、心底楽しそうに眺める彼女にも気付かぬほどに。
「帰り、念の為に傘持って行く?」 結局、何も思い付かぬままたどり着いた彼女の家。 無事に雨が降り出す前に辿り着いたのは良いが、僕が帰り着くまでは待っていてくれそうに無い。 やはり、濡れるのは嫌なので、その言葉に甘えることにする。 貸してもらったのは、明らかに彼女の物と思えし綺麗な碧紫色の傘。 「綺麗な色だね」 「うん。あの花の色に似ていると思って」 「ああ、確かに似てるね」 あの花、と言うのはもちろん勿忘草。三ヶ月前まで僕が毎朝彼女に贈っていた花。 彼女に、幸せを贈ると約束して、もう三ヶ月も経つのだ。いや、まだ三ヶ月なのかもしれない。 「本当はね、あの花を贈ったのには、もう一つ理由があるんだ」 ふと、思い出したように言ってみた。まぁ、実際思い出したんだけど。 あの頃は、まだ重過ぎるかと思って言っていなかったもう一つの意味。 「なに?」 「……真実の愛、勿忘草のもう一つの花言葉」 その意味も込めて贈ったんだよ。と言えば、彼女の頬がたちまち紅く染まる。 こういう反応は変わってなくて、惚れ直す瞬間だったりする。 「あ〜あ、特上級の幸せ貰っちゃった」 綺麗な笑顔で言った彼女は、やはり照れ臭いのか、玄関のドアを閉めてしまった。 バタン、と無情な音を立てて閉まったドアの外で、彼女の笑顔が目に焼きついて、さっきの彼女に負けないくらい僕の頬も紅くなった。
「幸せだな」 そんな僕の心情とは全く反対の、泣き出しそうな、情緒不安定な空を見上げて、僕は密かに呟いた。 掌の中の鮮やかな傘。 雨が降るのも、良いかもしれない……。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
「花よりも美しく、咲き続けるモノを・・・」の番外編 14.情緒不安定な空を見上げて、僕は密かに呟いた を使用。その後の2人、です。 微妙に性格が変わってるかも・・得に彼女。 文中でも言ってますが、逞しくなりました(苦笑)でも、コレが本質です。 て言うか、甘いです!
やっと、お題一つクリア。前途多難です。
2004年02月16日(月)
|
|
|