みやにっき
詩人を名乗ることにした。

2002年05月30日(木) これを廃止してはならない

行程




はす向かいの男の咳で
目をさましてしまった
となりの年寄りはまだ目をとじているので
きっと とおくに行くのだろうと思う

このまちに大きな交差点はなくて
行き交う なんていう言葉を
使うあてもない
そうした風景がずいぶんとながく
線路をはさんでいる

エンジンが積まれているから
電車ではない と聞いた
それでもただ前をみて走るから
ぜんたい くり返すリズムで
そんなことはすぐに忘れてしまう

アナウンスではなく
減速で押しつけられて
年寄りがくびをあげる

まゆとめがね
それから肩があがる

暮れるころなので窓の外は
しんとして明るい
こきざみなのがつまりエンジンで
年寄りがポケットを探る手が
やはりこきざみに揺れた

はすむかいの男は喉が悪いらしく
さっきから
座り方をかえている

あんまりたんねんに
切符を見るので
つられてポケットを探った
まだとおく行くのだがつられて

もうすぎましたか

声で知ったのだが彼女で
さしだされた文字づらにはおぼえがなく
やはり自分は眠っていたのだなあ と
ぼんやりと首をかしげてみせる
それでも いつか通ったときに
それはいくつか前の駅だったように思う

わからないです

あらあ とか なにかこぼして
もういちど切符をながめて
まえのめりに腰をあげる
たくさんの荷物を抱えなおしたころに
ゆるやかに加速がはじまり
年寄りの足がもつれる

にがわらいをした

もうねむくはなかったので目の端で
年寄りと車掌が話すのを
見ないようにして聞いた
やはりそれはいくつか前の駅で
あらあ とか なにか聞こえた

うすく暮れ始めた駅に
迎えはいないのだろうと 思う
とびらのわきにひざを曲げて立って
うつむけた年寄りが黙っている
ただ前をみて走っていく

はすむかいの男が首を伸ばし
窓に向けてまゆをしかめた
やがてもういちど足を組み直し

きっと
とおくに行くのだろうと思う





******
さっき,相方とメッセしながら書いた。
ながら人間ギャートルズ。



今日のタイトルはエステル記9.27より。
ここらへんは歴史小説みたいでおもしろい。



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かといって練ってるわけでもないけど。
ま,ぼちぼちと。



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