カンラン
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2003年03月14日(金) はるたび1日目





いつもなら仕事が始まってしばらくたった頃

ばたばたし始める時間帯,

山間の空港にて出発を待つ。

隣には飛行機に乗るのが二度目だという同行者が

あれこれ悩んだ末にようやく購入した天むすを膝の上にのっけて

あたりをきょろきょろ見回している。

窓際の座席について早々にビニル袋をかさかさいわすものだから

「・・・もしかしてもう食べるの?」

とおそるおそるきいてみると反対に

「・・・ダメなの?」

と訊ね返す同行者。

あぁ,もしかしたらもうちょっと落ち着いてからの方がいいかも。

天むすころころ事件が勃発してしまう。

結局その後2,3回

「もういい?」

「もうちょっと待って。」

なんていうやりとりを繰り返した。

そうとうお腹が減っていたらしい。





お昼ちょっと前に羽田空港に着いてからは今度は私が従う方だ。

東京の街は全くもってようわからん。

ひとまず最初の目的地・横浜まで。

うんと早いスピードの電車に揺られて覗き見る窓の外の光景は

私がいつも乗っている電車のように

家々の間を線路という縫い目をたどるようにして走り抜ける。

私がそう言うと,

同行者は,いやいや,奈良の様子にそっくりなんだよ,と言う。

ちいさなニッポン。

ひとつのものを一緒に見て,

それぞれが持つものとの繋がりを感じることができ,

語り合えることの嬉しさよ。

東京の町並みを眺めながら,

私は奈良の町並みを必死に思い出し,

ところどころのぼやけた部分を

想像と,目の前に広がる東京の景色で埋めようとする。





そうこうしているうちに手をひかれるようにして

あたふたと電車を乗り換え桜木町。

迷いながら地下鉄クーポンもしっかり入手。

カメラを持って一日駆けずりまわった港町は,

一帯が遊園地のような,おもちゃ箱のような,

そんな嘘みたいな楽しいものがてんこ盛りの場所だった。

カルチャー・ショック。

見るもの見るものが作りもののよう。

いや,実際ばりばり作りものなんだけどね。

ほんとに首をぐりんぐりんまわしてあたりをずっとずっと見回していたよ。





立ち並ぶ大きなショッピング・センターを通り抜けて

大きな観覧車を見上げて

赤レンガ倉庫。

もう6,7年前になるかな。

ずいぶん昔におみやげに買って帰った

可愛らしい赤い靴のチョコレートも健在のご様子。

海沿いの遊歩道を歩いて大さん橋に向かう途中,

偶然見つけた小さな感じの良いお店は

偶然にも同行者の好きな洋服を売るお店。

明後日の誕生日に一足早いプレゼント。

腹ぺこのお腹を二つ抱えて中華街。





空を支えるようにそびえ立つ宿泊先に帰り着いてから

ようやく腰やら足の裏やらの感覚が戻ってきて,

たくさんたくさん歩いたことを実感。

都会には歩くべき場所がたくさんあって

都会の人はそれ故たくさんたくさん歩くんだ。

それよりなにより,

窓から見下ろす夜景は夜遅くなってもかわらずきらきらしてる。

それが不思議で何度も何度も窓際に座り込んだ。

世界のどんな金持ちマダムの胸元だってかなわないぞ。







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