カンラン
←過未→


2003年03月05日(水) たばこと地下道




たばこをやめてから地下道を通るようになった。

毎朝の通勤時,電車を降りてからのことだ。

たばこと地下道とどういう関係があるのかというと,

以前は地上のとある片隅にある‘いつもの場所’でたばこを吸っていたから。

暑い日も寒い日もそこでたばこを吸いながら,しばしぼぅっと朝の光景を眺めるのが日課だった。

そこに集まるのは私を含めて3人。

‘いつもの場所’の‘いつもの人々’だ。

お互い言葉をかわすことはなかったけれど,

そのうちの誰かがしばらく姿を見せなかったり

そのうちの誰かの‘いつもの席’を知らない人が陣取っていたりすると

なんとなく落ち着かなかったり。

そんな朝を数年間繰り返してた。



たばこをやめたら‘いつもの場所’に立ち寄るどころか,

早い時間に市内中心部にたどり着いておく必要すらなくなった。

なのに私は今までと変わらない時間の電車に乗る。

変わったのは地下に潜るようになったこと。

長いエスカレーターに乗って下へ下へと降りてゆき,

閉じられたシャッターたちに挟まれた地下の冷たい通路を歩いていると思うこと。

地上の景色が見えないここは一体

どの街のどの辺で

どんな時間帯なのか

外は晴れているのか曇っているのか

そんなことが普通に分からないということだ。

もちろんその気になれば,

頭上の案内表示を見れば,

携帯で時間を確認すれば,

道行く人々が傘を持っているのかいないのかを見れば,

だいたいのことはわかるはず。

それなのに真っ直ぐ前だけを見て

その不自由さをあえてそのまま受け止めている。



そう。

そしてたとえばこうして地下道を行く私を一枚の写真におさめたとして,

それを5年,10年,一昔前の自分に見せてみる。

どういう反応をしめすんだろ,私。

その時々の現在からは思いもつかない(もしくは,知らない)ような仕事をして,

かつ自分をなくさないように毎日を過ごせてたらいいな,

未来のことをそんな風にぼんやりとしか考えられなかった私だから

なかなかおもしろい反応を見せてくれそうだ。

広島に地下ができるなんて夢にも思ったことなかったから,

他の都市で暮らしていると勘違いするのはまず間違いないかな。

割りと何年か単位ですぱんすぱんとまわりの環境が切り替わる傾向にある人だから,

それはそれで驚くこともなくすんなり受け入れそうだし。

ただ毎日をどんな風にして過ごしているかなんてことは,ある意味想像の域を越えてる。

今してる仕事にしても,

今そばにいる人にしても。



随分前にタモさんが「笑っていいとも!」だったかな,何かの番組で,

「俺はね,これがしたいとかこれをしようとか,自分で決めたためしがないんだよ。」

と言ってたのを耳にした。

あれ程毎日毎日テレビに出てる人の言葉とは思えず,衝撃を受けた。

そのテの人は夢とか欲とかごっちゃごちゃでもっとがつがつしてるのかと思ってた。

同じ生き物とは思えないぐらいに。

タモさんも未来の自分を描けなかったクチなのか。

・・・いや実際,強い信念持って描ける人なんていないのかなぁ。



そんなことを考えて今日は地下道を歩いていた。

昨夜あたりからどうも咽喉の調子がおかしくて

いささかぼんやりした頭で考えてるから

自分で何が言いたいのか,何を書いてるのか

よくわからなくなってきた。

あぁ,風邪だけはご勘弁。











BROOCH |chut! mail マイエンピツに仲間入り