カンラン 覧|←過|未→ |
すぐお隣の県だ。 広島市自体が県の西よりなので, なんだかとっても近場のような気がするのはあの頃も今も変わらない。 ・・・で, この12月初旬の週末,ふらっと出掛けるにはほど良い場所のように感じたわけです。 それにしても,思えば今年,私は旅づいてる。 いっつもは根っこ生やしてこの辺りにへばりついてるんですけどね。 11月を中休みにして9月から毎月あたまをいろんなところで過ごしてます。 めずらし。 そんなわけで今朝は10時頃の列車に乗り一路湯田温泉へ。 新幹線ではなく在来線に揺られて行くのんびり旅です。 県境,岩国のあたりまでは早いのですが, そこから先は見慣れぬ風景が続く山口県南部横断の列車旅。 時々うとうとしながら 北側の車窓から見える紅葉や 南側の車窓から見える穏やかな瀬戸内海を眺めて過ごしました。 いつも思うことですが,行く先々で山のかたちって違いますよね。 広島の山がもちろん,私にとっては一番違和感のない山々のかたちなんです。 それに比べると・・・ 9月に見た鹿児島の山はつくりものかと疑ってしまうぐらいのこんもり度だったし (まんがで見るお茶碗てんこ盛りのご飯みたいなかたち), 今日見る山口の山は絵に描いたようにたくさんたくさん連なっていて力強くシャープだ。 雄雄しい感じ。 いくつかひらけた街場を通って小郡に着いたのがお昼すぎ。 少しお腹が減ったものの,とりあえず山口線に乗り換える。 普段私が乗りなれてる路面電車がおっきく成長して力持ちになったよな黄色い列車。 車掌さんは居らず,運転手さん一人だけで走ります。 そのため,いくつかの主要駅以外では 後ろから乗って,降りるときは運転台に近い一番前の出口で運賃を払って降りる。 うぃぃぃぃぃんぶおぉぉぉぉぉ,っとまるでバスが走るような音を響かせながら北へと進む。 それにしても乗りなれない列車は乗り方・降り方ひとつとってもどきどきする。 「湯田温泉ではすべてのドアが開きますので,近くのドアから降りてください。」 というアナウンスを聞いても, 「ここのドア開くよね?でも一応一番前まで移動しとこうか?」 なんて妙に落ち着きがない。 約20分ほどの緊張のひとときを過ごしたのち,結局無事降車。 駅前の巨大な白狐のモニュメントに気付くことなく(巨大すぎ,かつ近すぎて), ひとまずお宿へ。 話好きなフロントのおじさんとの会話の切れ目を手探りしながら やっとこさ荷物を預けてバスで山口市内へ。 明日は雨というだけあってどんよりした空模様だなんて思っていたら, 降りるべき停留所を過ぎてしまい, ・・・というか思っていたのと違う路線を走るバスだったので, ひとつほど歩いて戻って軌道修正。 パークロードという名前がついたゆるい傾斜のきれいな大通りを上り, 地下道を経由して山側へ。 小学校の修学旅行ではバスの中からしか見ることのできなかった瑠璃光寺。 少しの間,参拝はおあずけ状態であったかいお蕎麦をいただく。 空腹に負けてお寺にごくごく近い場所で手をうってしまったにしては, ものすごくつやがよくてつるつる,私好みのしっかりしたお蕎麦。 たっぷりの山菜もうれしいかぎり。 あったかくみたされたお腹を抱えていざ瑠璃光寺。 猫とたわむれながら(この猫,私が鳴くと鳴き返してくれるのです。) 池をぐるりとまわって見上げる五重の塔は一瞬 地味 と感じてしまうほどお庭に溶け込んでいた。 目立ちはしないひっそりとした古めかしい姿。 まわりの緑となじむべく使われた木材は 所々に誇らしげに,所々に痛々しくその年輪を滲ませている。 短命な人間が作り出す長命な建造物。 小さなドラえもんのお腹にくっついた大きなポケットみたいだ。 しばらくお寺を堪能したあと, うぐいす張りの石畳,毛利家のお墓をまわって夕暮れのザビエル記念聖堂へ。 小学生の私がこの聖堂を訪れたときはまだ焼失前だったから, 記憶に残ってるのと随分違った真っ白い現代的なすがたに正直戸惑ってしまった。 資料館で静かに流れている焼失の日の映像があまりにも強烈で, しばらくモニタァの前から動けかった。 燃え盛る聖堂にレンズを向け,カメラをまわした人は何を思ったのだろう。 痛々しすぎる。 ミサが始まろうとしている教会をあとにして表に出ると, すっかり陽が落ちている。 少しばかりどこを歩いているのか分からなくなりながら とぼとぼとぼとぼ山道を下って 途中ちゃっかり酒屋さんに立ち寄り ビニィル袋をかさかさ下げてバス停のある国道を目指す。 ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ <以下追加部分> お宿に帰り着く寸前,せっかくの旅だというのにいやぁな出来事勃発。 お宿は目の前,細い道路でのできごと。 歩道なんてないぐらいの細い道を 信号待ちでずらり止まっていた車をよけるようにして歩いていたら 後ろが何だか騒がしい。 「おりゃぁ!」だの 「わりゃぁ!」だのというおじさんの声が聞こえる。 なんとも物騒なこともあるもんだと思っていたらその人, どうやら私たちめがけて声を荒げながらずんずん来てる。 立ち止まって振り返ると想像を裏切らないすがたのおじさん(結構小柄,サンダル履き。)。 話をきいてみると, 車に当たったじゃろうが!来て見てみい! とのこと。 一応, 当たってないです。 と話をする姿勢は見せたんですけど,これまた案の定通じない。 多分むこうも引くに引けない状況なんじゃないかと思うけど。 言われるままに行ったって痕らしきものなんて何もあるわけがないのです。 だって当たってないのだから。 こっちだって道が狭いのは重々承知して壁に引っ付くようにして歩いてたんです。 それにここは車がずらり信号待ちの細い道。 おじさんが車を離れていればその間通行は妨げられてしまうわけで。 こっちが信号を気にしているなんておかしな話ですけど。 案の定間もなくしてぶつぶつ言いながら去って行かれました。 旅先でこういう人にぶつかった場合(いやいや,実際はぶつかっちゃいない。), 自分の中でのその町自体,その旅自体に嫌ぁなあとあじ残してしまいますね。 まぁでもこのことについてはそんなに深刻なものじゃなくてよかったです。 その後は,待ちに待ったお部屋でのふぐづくしの夕食です。 ふぐ刺し,ふぐ鍋,ふぐのてんぷら,その他海の幸大集合。 どうにもこうにもしあわせ気分。 買って来たお酒も活躍です。 温泉から出て来てからまた続きをちびちびと。 仲居さんが言ってたおみやげ屋さんに行くつもりが結局今晩は行けず終い。 それにしても, 帰りの電車の時間や乗り過ごしを心配しないで飲むお酒はほんとにおいしい。 それでも明日は早起きして ひとっ風呂浴びて 中原中也記念館に行ってから広島に帰ります。
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