早瀬の呟き日記

2003年01月09日(木) 「でも私は幽霊が怖い」

以前ちらっと書いた「バルタザールの遍歴」の著者、佐藤亜紀氏のエッセイ集(四谷ラウンド)です。
「バルタザール」は「これが駄目だったら死ぬしかない」という佐藤氏の覚悟がこめられていたとはいえ、「上手いのはわかるがイマイチ面白くない」「何でファンタジー風味なの?」というのが早瀬の正直な感想だったんですが、このエッセイ集はかなり面白かったです。
たぶん「バルタザール」を「面白くない」と感じたのは、早瀬が近代ヨーロッパ史に興味がないからでしょう(笑) 第三帝国も小男の絢爛舞踏(ガンパレ用語ですのでお気になさらず。むっちゃ戦争のデキる奴もしくはむっちゃ人殺しの上手い奴、と言い換えてもいいです)も、割にどうでもいいんだよね。ただ、歴史を調べるときに文才のない人(学のない庶民であることもあるし、学があっても文才なんてものにかぶれてない人もいる)の手記の方が断然面白い、というのは同感ですね。個人的には「神話」の魅力も捨てがたいのだけれども・・・何しろ佐藤氏言うところの「似而非学問」社会学を専攻していたヤツだからさ(笑)
それはそれとして、佐藤氏の持つ今時珍しいほどの「健全なタフさ」が爽快なエッセイ集です。この硬派なタフさは鴎外に似てるかもしれない。(まあ彼も少々大人げない人ではあったようですが) かなりばっさり斬ってますよ、色んなモノを。男より男らしい、とか言いたくなります。
本人も「全然フェミニストではない」なんて言ってるけど、いやーそれはやっぱり一種のフェミニズムだと思うけどねーとこっちは思いつつ、口に出せない、頑固親父みたいな口調なんですよね(笑) 特に「ストーカーを殴り殺そう!」は好きな一編。そうそう、レクター博士がセクシーなのは知性と感性がずば抜けてる(という設定)からよね!と頷いてしまった。
やっぱり・・・なんというか、よその国を知っている人は見方が広くて面白いな、と思いました。いや、言い方が杜撰だな。「よその国」を知っていて、かつ「自分の国」にも「よその国」にも同一化しない人、と言うべきかな。「国際人」ではなくて、「異邦人」。タフじゃなきゃ、なれねえよこれは。
「でも私は幽霊が怖い」なんて言ったってちっとも可愛くないし、それを承知で題名にしたんだろうな、と思います。


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琳 [MAIL]