| 2002年10月26日(土) |
「エレファント・マン」(ネタバレ) |
寒くなりましたねえ。最近ホットのまろ茶ばかり飲んでいる早瀬です。・・・何故とは訊くな(笑) 赤坂ACTシアター、藤原竜也主演「エレファント・マン」を見てきました。19世紀末ロンドンに実在した、「象人間」と呼ばれた異形の男性の物語。詳細は以前の日記でデヴィッド・リンチ監督の映画と関連して書いたので省略しますが、いやあ・・・よかったです。 挿入される歌(湯澤幸一郎氏のカウンターテナー。実にいい!)もマイナー調のいい曲でしたし、宮田慶子氏の演出はダークでシンプル、かつ男性俳優が女性役も演じるというのが珍しかったし、俳優陣は皆個性的でよかったです。ただ、規模は大きくなくて密度の濃い作品なので、赤坂ACTシアターはちょっと大きいかな?という感じです。 藤原竜也くん、よかったです。スタイルもいいしなあ・・・出ている間殆ど上半身裸なんですけど、その上半身の美しさには眼を惹かれましたよ。ジョン・ハート(映画)と違う藤原竜也の「ジョン・メリック」は、少年ぽいというか、初々しくて、痛々しかったです。演技派ですね。ラストシーン、ゆっくりと仰向けになっていく場面の美しさは、彼の美しさがぴったりハマっていたと思います。肩とか鎖骨とか顎とか胸とか、いちいちきれいで見ちゃうんだよなあ(笑) トリーヴス医師がジョンに触れていくうちに、段々自分の心の深い淵を覗いてしまい壊れ気味になるところは、重かったです。トリーヴス役の今井朋彦氏は、とっても美声でした。アンソニー・ホプキンス(映画)とつい比べちゃうんで、最初はちょっと若くて貫禄ないなあと思いましたが、なかなか。 ジョン・メリックの物語に触れるといつも、言葉を失います。 自分の心が裸にされる感じ。見ているのはこちらなのに、結果的には見られているんじゃないか?という感覚。自分の中にある、どうしようもない弱さ、偏見、肯定と否定の往復、捨てられない倫理と捨ててしまいたい倫理、道徳、偽善、そう呼ぶ基準は?強さって?幸せって?同情って? そんな、色々なものが同時に込み上げてきて、どう言葉にしたらいいか全くわからなくなる。今まで生きて積み上げてきた思考も感覚も、全てチャラにされて混沌のスープの中に放り込まれる感じ。 断片的な感想はいくつもあるけれど、それは他の登場人物のように彼を鏡として勝手に得た感想に過ぎないのかもしれず、ジョンについて語った言葉は否応なくその人自身を曝すことになる。だとすると、「若くてきれいな俳優」を観に来ている自分に「若くてきれいな俳優」として見えているだけの「ジョン・メリック」がそこにいるのかもしれないと、怖くなるのです。この芝居は、観客に対する物凄い皮肉なのではないかと。そして結局、沈黙するしかないという気持ちになる。ヘヴィで、痛々しくて、悲しいのだけれど「泣く」という甘えを許さないところが、彼の存在にはある。「甘え」と言うと語弊があるかもしれないけど・・・「余裕」ですかね。「泣ける話」というのは、見る側に余裕を残してくれる話のことだから。 ラスト、一緒に観に行った友人は「ある意味覚悟の自殺」と解釈していて、私は初めて、あーそうかと思いました。彼は天国を信じていたからなあ・・・。
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