夜中に居間に来た弟が悲鳴を上げた。ティッシュを片掌にべしべし畳を叩いている彼は、「アリ!アリだよ!」と言う。悪い眼を近づけて見ると、なるほど、アリがあちこちを歩いている。これは殺さなくては。(愛護団体の抗議は受け付けません) ティッシュを片掌に、早瀬もべしべしやる。・・・が、なんか面倒臭くなってやめてしまった。だって、アリじゃん。何ができるってのさ。それに私の部屋2階だし。特に被害はないね。 という訳で2階に戻ってビデオとか見て、また下に降りてくると弟はまだ戦っていた。 弟は虫が嫌いなのである。あくまでもジェノサイドするつもりらしい。仕方ないので掌を貸してやることにする。暇だし。 弟:「1匹ずつ潰しても埒があかない。アリは巣に帰るから1匹を囮にして巣を見つけよう」 なるほど、いいアイデアだ。ということで、適当にちぎったお菓子をうろうろしているアリの前に置いてやる。 以下、早瀬兄弟の会話である。
「ふっふっふ。罠とも知らずにかかったな愚か者め」(アリに) 「貴様らの好きにはさせんぞ」(アリに) 「笑止な。所詮お前らは袋の鼠よ」(アリに)
ここんとこちょっと「聖闘士星矢」が2人のブームになってるんである。 とか何とか言っていたのだが、囮のアリは一向に巣に向かう気配がない。 もしかして迷ってんのか? 隙間に入ろうとするのでやむなく「ぷち」。 さて、弟曰く「どーも玄関から入ってる気がする」とのことなので、玄関先を見ると確かに巣穴らしきものが2箇所ほど。 弟:「水入れるか」 早瀬:「いや、ダメだ。熱湯か中性洗剤はどうだ」 弟:「入らねえなあ・・・」 早瀬:「・・・よし、ボンドだ!」
ボンドで巣穴を塞ぎながら、弟は呟く。 「殺生はしたくないなーごめんねー」 お前がやるって言ったんだろ!(笑) 最後に弟は一言。「またつまらぬ殺生をしてしまった・・・」 で、その甲斐あってアリは出なくなったんですが、翌日の夜。早瀬の部屋に弟が入ってきた。 「姉ちゃん、虫!変な虫!殺してくれ」 「何だよ、そんくらい自分で殺れよ」 「だって変なんだよ!気持ち悪いんだよ」 どれどれ、と行ってみると、ムカデみたいな足のいっぱいある奴で、体長は2センチくらい。なんだよ、こんなんかよ。 びびる弟を尻眼にティッシュで「ぶち」とやった早瀬に、弟は「うわ、なんて奴だ」。 お前がやれって言ったんだろ!(笑)
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