Dance日記帳
モクジ|キノウ|ヨクジツ
「フラガール」(オフィシャルサイト:http://www.hula-girl.jp/index2.html)を観に行った。 ダンス映画には辟易としているのだが、この映画については、前にテレビで蒼井優の密着取材番組を観て興味をもった。公開が楽しみだった作品のひとつ。
「ダンスを馬鹿にしてんのか?ゴゥルラァ(「コラ」の巻き舌発音)!!」と凄みたくなるような、ほにゃらけた作品ばかり目立つ「ダンス映画」。ダンスという冠がつけば「シャル・ウィー・ダンス」のように売れると思っているのかと思うほど。脚本もダメ、演出もダメ、俳優もダメなダメが揃って有る意味完璧すぎるものが実際には多い。作品を見ながら「もっと勉強しろよな」と腹が立つ。 大抵はスタッフロールを見ることもなく、腹を立てながら劇場を後にする。
蒼井優のテレビ番組では、このフラガールの裏側の姿が映されていた。 本気で踊るばかりに全身筋肉痛になり、階段の上り下りにも苦心する姿や、役柄を掘り下げる行程。こいつは本当の「本気」で作品作りに取り組んでいる。映画で見せる涙は、単なる演技としてだけの涙ではないのだ。
去年発表会に出演したメンバーならば、この「涙」の意味がよくわかることだろう。 同じ「涙」を流した仲間として、深く理解できるはずだ。 そして、私もその「涙」を知っている。
まだこの映画は先日公開されたばかりだし、これから観たいと思っている人も多くいるだろうから、此処で多くを語るつもりはない。 何も聞かず、先ずは劇場に行くべし。 喜怒哀楽総てを見事に織り込んだ作品だから、ハンカチのひとつは持参していくのがお勧めだ。
---ここから先、ちょっとネタバレしちゃうので、ネタバレ嫌いな人は映画を観てから読んでください---
松雪泰子は抑も大好きな女優さんなので、何をしていても大いに嬉しいのだが、この映画では見事に「カッコイイ」ダンス教師を演じていてくれていて大満足。 じっくり見ると手先までが本当に美しい。フラを教える姿も堂々としていて、貫禄さえ感じてしまうほど。終盤、袖でダンサーを見ている様子はまるまる私の姿を演じられているようで恥ずかしく思えるくらい。 今までも何度となく発表会の袖で「ああああああ、私自身が出演するほうが100倍気楽だよぅ。」とハラハラドキドキ落ち着かない時を過ごし、終演後の誇らしい気持ちを味わい、そしてゆるやかな別れを感傷とともに受け入れる。 そう簡単には表現できない複雑なダンス教師の思いを見事に演技してくれたと思う。 何時だって最終的に、ダンス教師は孤独で切ないのだ。其のような普通では気付かない部分までが見事に表現されていたのだから堪らない。
蒼井優のダンスは本当に素晴らしかったと思う。 健やかに伸びた頸や、背中。綺麗な肩のライン。その佇まいが既に踊り手として十分に思えるほど。 フラについては私は全くド素人なので何とも言えないのだが、それにしても綺麗な踊りだった。 腕の使い方も滑らかで、観ていて不安になる要素がない。 大抵はどんなに稽古を積んだ女優であっても、プロのダンサーに比べてしまえば、プロから見てしまえば、其れは稚拙なものに過ぎない。ゆるい腕の使い方や、ほんの少し落ちている背中や腰のラインで「ほらね。素人だからね。」とガッカリするものだが、其れも一切見られなかった。 「私もフラやってみる!」と言わせるような、凄い迫力と刺激があったように思う。
必ず触れなければならないのは、南海キャンディーズのしずちゃんだろう。 この子のように、どこか不器用で、ぎこちない子が、小さな努力を重ね、少しずつ成長を遂げ、見事に花開いてゆく過程を私は何度も見てきている。 だからこそ、どんなに見返りがなかったとしても、報酬につながらなくても、この感動が支えとなり糧となり、ダンス教師を辞めることはできないでいるのだ。 過去にMDSを巣立って行った子たちを思い出して、目の奥がつーんと痛くなった。 松雪泰子とのダンスレッスンシーンにおいては、笑いすぎて(予告編を見ていたのにもかかわらず)右脇腹が痙ってしまうほどだった。 しかし、しずちゃんって、無駄にデカイ。それが武器なんだな。
ノンフィクションをもとに作られている作品だからこそのリアリティと、各キャラクターの持ち味。この作品はそういう意味で何倍も楽しめる映画なのだろう。
現ハワイアンリゾートのフラダンサーズの出演もあってなのか、ちりばめられたダンスシーンは見応え十分。 フラダンスを専門でやっている方から見れば、どうなのかはわからないが・・・・私から見ればタヒチアンダンスも迫力満点で、フォーメーションも美しく、「ものすごく練習を積んだのだろう」という完成度の高さを伺えた。 ブルーハワイの大人っぽいダンスにおいては、思わず次の休みにはハワイに立ち寄って一度フラのレッスンを受けておきたいと本気で思うほど魅力的だった。
少なくとも、日々レッスンを通して、ダンスの難しさや本当の楽しさを知る皆さんならば、確実に楽しめる作品だと思う。 そうそう、プログラムも忘れず購入しておくべし。ハードカバー仕立て、読み応え十分のプログラムだ。合宿日記を読むと、出演者の素顔に触れることもできて、さらにこの作品を好きになることだろう。
良い作品は、必ずパワーを与えてくれる。 この作品は、しっかりとパワーを私に授けてくれたように思える。 明日も、明後日も、私は踊ってゆきたい。
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