2002年03月23日(土)
ホルガというカメラがある。実売価格4000円足らずの、おもちゃのカメラだ。略して「おもカメ」。トイカメラともいう。 数あるおもカメの中でも、中判の、つまり普通より大きなフィルムを使う珍しいものだ。そんなカメラを喜んで使う人達も、まあ珍しい存在ではあるが…。 こいつが、なかなかどうしていい仕事をする。
先日、このホルガにリバーサル・フィルムを充填して撮影に出掛けた。しかも曇りの日に。 リバーサル・フィルムとは、ネガ・フィルムに対して反転していない絵を写すフィルムのこと。つまりフィルムには、そのままの色で、透明な絵が記録されている。うまく写せれば、とてもキレイですよ。発色もいい。ただし高い。フィルム自体の値段も高いが、プリントはもっと高くつく。現像だけならともかく、紙焼きする予定があるなら(大勢の人に配るなら尚更)リバーサルはやめた方が無難です。 そんなフイルムをホルガに使う人は、うーん、あまりいないらしい。とにかく、ホルガというカメラがかなり危険物なので、リスクを考えると妥当とは言えない。確かに。 ピントも合いずらいし、ともすれば光が入って撮れてるかどうかすら怪しい。 でももし神様が微笑んでくれたら、それはもう、素晴らしいホルガな写真が撮れるのです。 ホルガ信者はその瞬間のために、カメラを改造し、何度裏切られてもフィルムを充填してしまう。おお、これぞマニア。
曇りを選んだのにも、素人考えの理由がある。 晴れた日は日光に負けて色が飛びやすいからだ。例えばフラッシュをたいて写したとき、光が強過ぎて白い顔になっていることはないだろうか。そんなようなことだ。 曇りや雨の日の方が、色がよく出る。 これは一般論なのだが、この理屈は普通のカメラにだけあてはまるものだ。ホルガみたいな絞りもシャッタースピードも変えられない、しかもレンズが暗いカメラには関係のない話のはずだ。 でもね、ちょっと試してみたかった。 まがさした。って言うのかしら…。
曇りといっても、帰る頃にはきれいな夕陽が見られたので、かなり明るかったと思う。色んな花に出会えて、とても楽しいひとときだった。可愛い猫にも遭遇した。 ワタシは上機嫌だった。 これが実験だということも忘れて。
本日、現像が出来あがり、ワタシはホルガの呟きをきいた気がした。 「だから無理だって言ったじゃん…」。 真っ暗だった。遠目には、何も写っていないのかと思うほど、真っ暗だ。 ホルガが喋れたなら、きっと彼は、彼女は、「無理だよ、暗いよ」と言い続けていただろう。 「ちゃんと説明書読んでよ」と。
ホルガは明るい太陽を背にして撮りましょう。 そうそう。そんなこと書いてあったよね。説明書は読んでたけどね。 なんでもやってみない気がすまないんだよね。
スキャナーで露出とガンマ値をこれでもかと上げながら、ワタシは考えた。 「次はプロビアの400にしてみようかなあ」。 懲りないのが、マニアってものだ。
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