2002年03月19日(火)
我が家の家宝、ダイキチさん(7歳、元オスのニューハーフ、一応ネコ)が、予防接種へ行きました。もちろん、一人でではなくワタシがお伴いたしました。
つい最近、毛玉が胃にたまってゲロゲロしまくり、病院へ行ったばかりだというのに、彼ったら、運搬用の猫ハウスに何の躊躇いもなくお入りになる。あんなに痛かったのに、怖かったのに、すっかり忘れてしまっていたらしい。さすが、猫。
いつものようにしばらくしてから、「こりゃ、例のヤツか?」と思いついた様子で、震えながらワタシを見上げる。そんなことしてるうちに、車は獣医さんのところに着いてしまったよ。 いよいよもって、忘れていた苦難のひとときが甦った彼は、とにかく先生に背を向ける。看護婦さんにギュッと抱えられているが、とにかくとにかく、先生を視界に入れたくないようだ。 「あら、緊張しちゃって、手のひらに汗かいてるね」。 大ちゃんを押さえていた看護婦さんに、肉球をニギニギされる。不安げな目をワタシに向け、何かを訴えるように「ニャー」とないた。 言いたいことは簡単に察しがつく。 「帰りたい」だろ? 注射したらね。 悲しそうな大ちゃんを触診しながら、ふと、先生が呟いた。 「緊張するよね。大ちゃん、先生のこと嫌いだもんね」 「…あ、いえ」 思わず、ワタシが否定してしまった。そんな、先生ったら、本当のことを。 うろたえる飼い主をよそに、先生はデジカメを取り出す。 この病院では、予防接種の証明書に、顔写真をすり込んでくれるのだ。 先生がカメラを構えた。が、やっぱり大ちゃんは先生をみようとしない。これでは証明書に、家宝の後姿しか写らないではないか!! ワタシは焦って、先生の横に立ち、いつもの調子で「大ちゃん、こっちこっち」と呼んでいた。バカな飼い主丸だし。猫なで声の見本みたいだった。 すると、これが条件反射というものだろうか。 大ちゃんも、先生のことなど忘れたように、ワタシを振り返り不思議そうな顔をする。 そこをパチリ。 おお、なんてラブリー。なんて素直な子なんだろう。 「大ちゃん、写真撮ってもらってよかったねえー」 さらに暴走する飼い主は、ご満悦で証明書をいただいた。
ダイキチくんは、ご機嫌ナナメだ。 どんな可愛い証明書をもらおうが、お尻にチクッと痛かった。 しかも自分が窮地に立たされているというのに、頼みの飼い主はウカレまくって役立たずだったのだ。 「さあ、帰ろうね」 待合室で、ワタシが猫ハウスをのぞき込むと、彼はプイと顔をそむけた。 「あれ?」 例えすぐに忘れてしまったとしても、あの瞬間、彼ははっきり、ワタシのことを嫌いだったと思う。例え、1時間後には仲良くお散歩していたとしても。
憎まれ役もつらいよ。 君のためなんだけどね。 わからないんだろうなあ、一生…。
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