「高く飛び立とう!」
そう、チームに恵まれず、できの悪い監督の下でプレイしている選手に声を掛ける
しかし、彼らの多くは、「いえ、いいです。」「今のチームが気に入っています」などと返事をする。
周りから観れば、
この選手はもっと大きい舞台でこそ活躍するのに!
彼は正統な指導を受ければ、プロレベルになるのに!
というのが疑いようもない場合でも、「いいえ、いいです」と返事をする。
偉大になる選手のこれまで生きてきた環境がそうさせるのだろうか。
毒親が子供の自己肯定感を壊し続け、自由だというのに不自由や絶え間ない不安を感じさせるように、環境がそうさせるのだろうか。
幼稚園、小学校などの想い出が、その時の指導者が、何かが足に絡みついた鎖のように飛び立たせないのだろうか。
彼らは飛ばない。
彼らは飛ばないで選手生命を終えていく。
食事を人の三倍も五倍も食べ、毒性があるかもしれないプロテインを飲み、睡眠を増やして勉強をせず、練習以外にウエイトトレーニングをして、全身全霊、すべての時間をそのスポーツに捧げているのにも関わらず。
彼らは耳を傾けない。
彼らは耳を傾けないで選手生命を終えていく。
まるで、目的もなく生まれ、そして死んでいく、全ての人間のように。
つまり、私であり、あなたであり、彼である。彼ら全員である。
彼らは声が聞こえても、耳を傾けず、飛ばないのである。
「より大きな舞台が用意されているよ」
と言われても。
毎日、耳をふさいで生きている。