砂肝

2002年03月15日(金) ホラー好きの弁明

どうして私はホラーが好きなんだろう。

という問いには即答できないが

いつから私はホラーが好きになったんだろう。

という問いならすぐに分かる。

大学生の頃。そのころで間違いない。

高校くらいまで、私はホラーは苦手だった。

弟にお化け屋敷に連れていってくれとせがまれて行ったものの。

入り口でホラー映画のハイライトシーンのみ上映しているのをみて

二人とも怖じ気づいて中に入らず帰ってしまった。

あれも高校の時だったし。



なにがきっかけだったかもさだかではない。

映画、本、美術、音楽、そしてゲーム。

ことに鮮やかだったのはクライブ・バーカーの本。

「血の本シリーズ」というデビュー作にしては質、量ともに破格のホラー短編集を

連続刊行し、その大胆な発想と見事なまでの流血ぶりに狂喜した覚えがある。

小説家にして映画評論家の友成純一。

その映画評論を読んで少しずつホラー映画の知識を深めていった日々も印象深く残っている。

友成純一のおかげで「ヘンリー〜」だの「ブレインデッド」だの見れたんだよなあ。

そしてさいきん遅筆なミステリ作家の綾辻行人。

彼の影響も確かにある。

ダリオ・アルジェント監督の作品を見始めたのは綾辻行人の影響だと思う。

そしてその言葉。

「ホラー映画に出てくる死体は祝福されている」

普通死というのは無残で没個性的なものである。

ホラーの中では違う。

全ての死が、ホラー映画という枠組みの中で作り上げられ、装飾され、特別なもの
として祭り上げられる。

だから、ホラー映画の中の死体は祝福されているのだ。

というのが大意だった。細かなことばは違ってると思うが。

とても共感した覚えがある。


そうして。

いまや、映画、本、ゲーム等日々ホラー者として精進しつつある私であるが。

(ちなみにおすすめ映画は「CUBE」「CURE」「seven」。厳密にはホラーではないものもあるけど。あ、「ブレインデッド」もいいです。笑えるホラーで。「ロード・オブ・ザ・リング」の監督として注目のピーター・ジャクソンが監督という驚きも味わえるしなあ。ゲームならバイオハザードシリーズとサイレントヒルシリーズがお薦め)

本来は恐がりである。

いや、

今も十分恐がりである。

くだらないことで恐がれるし。

ベットの下の……という都市伝説を初めて聞いたときもとても怖かった。

ゲームも本もホラー映画も毎回とてもドキドキしながら観ている。

それでも何故見続けるのか。

多分、現実の方がもっと怖いからである。

一種のショック療法なのではないだろうか。

現実で嫌なこと恐ろしいことがあっても

別世界の恐怖は束の間、現実の恐ろしさを忘れさせてくれるから。

そう。

現実には私は冒険をするタイプではない。

平穏無事な生活を送ることに安らぎを覚える。

だからこそ。

別の世界を必要とする。

花も実もある絵空事が、多大なる流血が、純然たる狂気が必要なのだ。

それが、現実には平凡な個人でしかない自分が、

バランスを保ち平和な日々を送る代償として切り離したものだからだ。

分かっている。

全ての人が必要とするわけではないだろう。

日常だけで十分充足している平和な方もいらっしゃるだろう。

勿論。

自分というバランスの悪い人間に必要な形式が

ホラーなのだ。

と私は思っている。


 < 過去  INDEX  未来 >


夏野 [MAIL] [HOMEPAGE]

My追加