桐野夏生 朝日新聞社 2007
STORY: 記憶をなくした状態で密林の中を歩いていた僕は、独立塾から脱走中の昭光と出会い、一緒に山を下りる。昭光からギンジという名をもらい、僕はなんとか生きていこうと努力をするが…。
感想: 朝日新聞で1年超連載されていた小説。
久しぶりに桐野夏生を読んだ。面白い。社会派の小説だとか、ネットカフェ難民や派遣で毎日をやっとの思いで生きている人々に対する問題提起をした小説だとかいう評判は聞いていた。
舞台は沖縄。ギンジは記憶をなくし、所持品も一切持っておらず、現金がゼロの状態である。そんな中で、ギンジは人の好意に甘えつつも、何とか自分一人でお金を貯め、自活しようとしていく。
対照的な昭光は、宮古島生まれのボンボンで、いい加減な生き方をしている。独立塾という厳しい環境から脱走を図るが、危機感は少ない。
この2人の対照的な様子が、2人交互の視点で描かれる。
確かに社会派の小説なのかもしれない。記憶を取り戻すまで、ギンジの感情の揺れが細かく描かれる。
記憶を取り戻してからも、自分の過去を振り返ったり、これからのことを考えたり…。とにかく心の変化が描かれて、引きつけられる。
どちらかというと、昭光の行方よりも、ギンジの生き方の方が気になった。
昭光の宮古弁がなんだか心地よい。
沖縄の人の戦争に対する思い、基地に対する思い、文化、政治のことなどにも目が向けられていて、興味深い。
が、最後があっけなかったかな…。ここで終わりなのか…というのが。もう少し先まで描いてほしかったかも…。
でも、ここまでたどり着くまででも、ものすごい長編ではある。分厚くて持ち歩くのが大変だった…。
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