『ゲド戦記』 ネタバレあり
宮崎吾朗監督の『ゲド戦記』 を見に行った。
前評判が悪いというか、色々聞いていたので、ひどいものを想像していったからか、そこまで悪くはないな・・・というのが第一の感想。でも、小さな子供向けではないことは明らかで、見に来ていた子供は途中で飽きたのか、怖くなったのか、泣き声も聞こえたし、どうも帰りたがっているようだった。子供に見せようと思っている人は要注意かも。少なくとも小学校高学年までは見せない方がいいかも・・・。
もともと原作の方は好きで外伝を除き全部読んでいるし、ル・グウィンのその他の作品も数冊読んだことがある。ただ人から色々聞いて、これは原作とは別物と思って見た方がいいな、と思い、そのように見たら、そこまで違和感はなかった。けれど、そうなるとタイトルに偽りありということになってしまう。
『ゲド戦記』というタイトルをつけたからには、今までの多くのファンにも見に来てほしいというか、そのファン層を動員しようというのがあったのだと思う。『ゲド〜』はファンも多いし、『指輪物語』 とかと並んで世界のファンタジーの代表作のようなものだ。その『ゲド戦記』をタイトルにするからには、『ロード・オブ・ザ・リング』 のように原作に忠実にするのが一番ファンを納得させることができるやり方だと思うのだが・・・。
今回の場合は、インスパイアされたとか、世界観だけをもらったという風にして、タイトルを『ゲド戦記』ではなく、別のもっと関係のないものにすればよかったのにと思う。ただし、そうなったらここまで観客が入ったかどうかはわからない。
また原作ファンとしては、やはりどうせ映画化するなら第1巻の『影との戦い』 から順繰りにやってほしいと思うと思うのだが、この話は第3巻『さいはての島へ』 を原作にしているようだ。3巻ではすでにゲド(ハイタカ)は大賢人になっている。アレンがゲドの旅についていき、ゲドが自分の力を使い果たすという話。
原作では、アレンが父の国王を刺すようなシーンはないし、アレンが影におびえているというのもない。影とのエピソードは1巻の『影との戦い』のモチーフを借りてきただけなのだと思うが、これも原作ファンにとってはブーイングなんだろうと思う。
ということで、この作品は『ゲド戦記』の世界観や設定のおいしいところ、使えそうなところだけをいただいてしまい、つぎはぎのような感じになっていたとも言える。さらに映画のシーンも、どこかで見たことがあるようなシーンが多く、これは父・宮崎駿の作品で見たような気もするし、その他で見たことがあるような気もするし・・・とにかく、色々なものを継ぎ合わせてひとつの話にしたような、そんな印象が付きまとっていた。
たとえば、『もののけ姫』 や『千と千尋の神隠し』 に出てきたどろどろした液体のようなもの、『千と千尋〜』を思い起こさせる竜と一緒に飛ぶシーンなど。キャラクターも今までの駿監督の作り出した悪役キャラに似せたような感じの人物が出てくる。けれど、それはやはり駿監督とは違って、悪役ながら憎めないとか、敵ながら凛々しいという感じはあまりない。絵が似ているのもあるかもしれないが、そのほかにもどこかで見たことがあるような・・・という感じにさせるところがいっぱいあった。
ただ、それが悪いというわけではないのかもしれない。ストーリーとしては、まあ言いたいことはわかるし、話の流れも確かにある。ただ、『ゲド戦記』としているのに、ゲドの活躍はあまりない。それがどうも面白くないし、原作とも違っている。(原作ではこの段階ではゲドはまだ力があり、ゲドが世界を救う)
一番この映画で嫌だと思ったのは、絵が気持ち悪いこと。アレンの顔が変わったりする場面やテナーに薬をもらいにくるのに悪口を言っている人の顔とか・・・。駿監督の作品にも気持ち悪い描写もあるけれど、なぜかあまりそれを感じさせない爽やかさがある。しかし、こちらはただ気持ち悪いだけ。陰鬱な気分にさせるシーンが多すぎて、何だか映画の3分の2くらいは、アレンと一緒に沈んだ気持ちになっていたかも。シリアスな話だと言ってしまえばそれまでだけれど、息が抜けるところがあまりない。最後のクモが変化するのもリアルなのかもしれないけれど、気持ち悪すぎて、子供にはあまり見せたくない。大人でも見たくない感じ。
駿監督とは違って、かわいいキャラクターもほとんどなし。映画のほとんどが暗く重いムードに包まれていて、アレンの心の闇が中心に描かれているから、見ている方も気分がどよーんとしてくる。
処女作として考えれば、そこまで悪くはないのかもしれないけれど、やはり駿監督の真似としても中途半端だし、自分独自の世界としても中途半端な感じかもしれない。
原作者のル・グウィンからも反論が出てしまったり、何かとお騒がせになってしまっているみたいだけれど、このような大きな原作を使うなら、原作に忠実にしないと、なかなかファンは納得しない。どうしてこの作品を選んでしまったのか、またどうせだったらやはり宮崎駿に作ってもらいたかった・・・とどうしても思ってしまうのである。
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