感想メモ

2006年08月22日(火) 讃歌  篠田節子


篠田節子 朝日新聞社 2006

STORY:
テレビドキュメンタリーの制作に終われる日々を送る小野は、ある日ヴィオラのコンサートに誘われる。その音色に圧倒された彼は、かつて天才少女ヴァイオリニストと言われた園子をドキュメンタリーで取り上げることにするが・・・。

感想:
 久しぶりの篠田節子の小説。それも私の好きなクラシック音楽を題材(ヴィオラ)とした作品で、ぐいぐいと引きつけられるように読んだ。最後の方は終わるのがもったいないような気分になったくらい面白かった。

 この作品は朝日新聞に連載されていたらしい。そちらに加筆修正を加えたものだそうだ。

 音楽というものは、人に生きる希望や感動を与える。しかし、それは万人に対してとは言い切れない。音楽の世界で生きる人にとっては、感動云々というだけではない奥深い世界があり、その葛藤に揺れ動く人々が大勢いるのだということを考えさせられる。

 評論家や批評家が論じたり、その道の権威が認める高尚な世界だけではなく、技術的な問題を抜きにしても、人の心を打つ芸術というのもある。しかし、一般的に芸術を極めようと思ったら、素人の口出しできぬ世界があり、その中で生きていかねばならないので、芸術家になるというのはとても大変なことなのだと思う。

 その道を極める・・・というのは、素人のようにただ感動することができなくなり、心からの感動を味わうことが少なくなるということなのかもしれない。知らなければ基礎ができていないとかはわからなくても、知っていればどうしてもそれが気になってしまうということだろう。これは音楽の世界だけではなく、きっと芸術の世界ならどれでも当てはまりそうだ。

 音楽の世界だけでなく、テレビ製作の現場や、音楽業界についても興味深く読むことができた。

 かなりオススメの1冊。


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