新潮文庫 (1998)2004
STORY: 大雨の日にタワーマンションで4人が殺されるという事件が起きる。その部屋に住んでいる一家全員が殺されたと思われたが、その部屋の実の持ち主は夜逃げをしていて無事だった。果たしてこの一家は誰なのか、そしてどうして全員が死亡したのか・・・。
感想: もともと朝日新聞の夕刊だったかに連載されていたものだと思う。宮部みゆきは好きだったので毎日読もうと思っていたのだが、最初の方の難解さに嫌になってやめてしまった。今考えても、やはり新聞連載の小説で毎日ちょっとずつ読んでいくやり方だとなかなかこうした作品は難しいような気もした。新聞連載ということもあってなのか、ルポライターが事件の内容をまとめている部分と普通に登場人物の視点から描かれる部分とがあった。最近こうしたルポ形式のものってはやっているのだろうか? 変わった趣向ではあるけれど。
内容は競売とそれを巡るトラブルや家族とは何かということを考えさせるようなものだった。昔読んだ『女たちのジハード』でも確か競売物件を安く手に入れるというのがあったと思うが、やはりこうした物件はなにやら危ないものを秘めているような気がする。元々競売に出されるということ自体が、何かに失敗したとか曰くありげな物件ということだし。こうした法律上のことなどもきちんとまとめられていた。
また一方では家族の愛とはどういうことかを問う作品でもあった。その典型が夜逃げをした一家と若くして未婚の母となった娘を抱える一家。父親となるはずの男が家庭を持つことを極度に恐れ、自分だけが大事で、一緒に暮らしていた人を殺すことさえいとわないとしたら・・・。
宮部みゆきの小説の中には時々こうした冷酷で人間とのつながりをほとんどもてないような人物が登場するけれど、この小説ではこの男がそうだった。
読むときは一気に読んだものの、何となく焦点がぼけているというか、読み終わってどうこういうような感動みたいなものはなかった。ただやっと解決したかというようなそんな後味だけが残ったような・・・。その意味であんまり面白いというわけでもないのかもしれない。
★その他の宮部みゆき作品 ・夢にも思わない →その感想ページ ・ドリームバスター →その感想ページ ・ドリームバスター2 →その感想ページ ・ブレイブ・ストーリー →その感想ページ ・淋しい狩人 →その感想ページ ・模倣犯 →その感想ページ ・R.P.G →その感想ページ
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