感想メモ

2005年03月26日(土) 優しい時間

優しい時間

 あの倉本總の脚本だということで、何となく見ることにした。私は『北の国から』は一応全部見ている。最後の方はあまりついていけない部分もあったが。ちなみにどうもこの作品、脚本が倉本總のときと、そうではないときとあったみたい。そうではないときには「原案:倉本總」という風に出ていた。

 海外での仕事が多いエリート商社マンだった勇吉は、妻を交通事故で亡くし日本へ戻る。そこで息子がぐれており、息子・拓郎の運転する車に乗っていて妻が死亡したことを知る。妻を深く愛していた勇吉は拓郎を許すことができず、拓郎も「一人で生きていく」と言い残して親子は断絶する。勇吉は妻が生前話していた「自分でミルをひかせるコーヒー店」のマスターになるため、妻の生まれ故郷富良野に向かい、念願の店を開く。一方拓郎は富良野の近くの窯元で陶芸の修行に励んでいる。喫茶店のアルバイトのあずと偶然知り合った拓郎は、あずが父の店で働いていることを知る。勇吉も次第に拓郎がどうしているかを知るようになり・・・。

 親子の断絶と和解を描いたこの作品は、北海道の美しい自然の中に佇む、本当にゆっくりとした時間の中にうまく溶け込んでいた。きっと親子が和解するのであろうと思いつつも、二人がどちらとも苦しむ様子にやきもきするようなこともあった。また拓郎とあずの恋愛のようなものや、あずがトラウマからリストカットなどをするというような若者の弱さみたいなものも自然に描かれていたと思う。

 最後の山場の和解のシーンはすばらしいものがあった。寺尾聡の抑えながらも父の優しさや息子に対する愛情、そして後悔のようなものを感じさせる演技もよかったし、二宮和也の一生懸命父にわかってもらおうと話す姿、謝る姿が涙を誘った。終わり方もさわやかな感じで本当によかったと思った。

 また、時々出てくる妻の幽霊が非常に優しい話し方で好感が持てた。実際には死んでいるはずなので妻の印象を勝手に勇吉が作り上げているだけなのだとは思うが、このシーンが毎回入って何となく心がほっと和む感じだった。でも、またこういうのをやりすぎると、子供たちが「人間は生き返る」なんていう風に思ってしまうのかもしれないが・・・。

 一点、残念だったのは、わき道にそれる部分がすごく多かったこと。その部分を入れずに、親子とそれを取り巻く人々の物語にした方がわかりやすかったのではないかと思うのだ。確かにマスターの人柄を描くために少しはそういうエピソードも必要だったのかもしれないが、あまりにも突拍子のない感じのエピソードもあったし、本当にいらないような気がしたものが多い。そういうそれる部分はどうでもいいやと流してしまう自分もいた。

 そういうところを削り、もっと親子の周辺だけを密に描いた方が、絶対にもっと引き締まったすばらしい作品になったと思うのだが・・・。ちょっと残念だった。

優しい時間 シナリオ


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