西村知美 文 西尾拓美 絵 アスコム 2004
西村知美は不妊治療の末、一度は子供をあきらめ、24時間テレビのチャリティーマラソンで100キロを走った。そして、その後、自然に妊娠し出産をし、現在は一児の母をしながらテレビにも出演している。そのような内容を綴った本である。
私は『天然出産』というタイトルからして、妊娠し、出産する様子を描いたものかと思っていたら、そういう具体的な内容はほとんど出てこなかった。
シェフをしている夫、西尾拓美さんの絵と文章がほんわかした印象をさらに強めている。知美さんの文章は読みやすく、あっという間に読めてしまう。
不妊治療に対しても夫婦二人いればそれぞれ思うところも違うし、けんかになったり、気まずくなったり、一歩間違えれば離婚ということもありうるのだと思った。こういった話について結婚前から普通に話し合っているカップルってあまりいないと思うのだけれど、ずれていると結構悲惨なことになるのかもしれない。
それから、妊娠したあとで浮かれた様子を見た人々からのバッシングがあったという内容を見てちょっとびっくりした。どこにもこうして人を叩く人はいるのだなーと思う。ただ、いくら自分が子供に恵まれずつらいからといって、人がおめでたい気持ちになって浮かれているのを叩くのってやっぱりよくないと思う。おめでたいことはおめでたいのだし、それは他の国の人が戦争をしていようが、地震や災害で大変なことになっていようが、仕方のないことだと思う。人の気持ちを思いやってとはいっても、この世の中すべての人の気持ちを思いやっていては何をすることもできない。逆にそういうことをする人がおめでたいときにこちらがどん底にあったとしたら、その人は自分がおめでたい気持ちを抑えることができるのだろうか?
本当はタイトル通りに妊娠出産についての具体的な様子をもう少し読みたかったかなとは思ったけれど、これはこれとしてすぐに読めるし楽しめるのでよいのかもしれない。
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