2004年09月10日(金) |
黒蝿 (上)(下) パトリシア・コーンウェル |
パトリシア・コーンウェル 相原真理子訳 講談社文庫 (2003)2003
STORY: 検屍官シリーズ最新刊。 ベントンの死後、検屍局長をやめたケイ。ルーシーやマリーノもそれぞれの道を歩んでいる。死刑が決まっている狼男ジャン・バプティスト・シャンドンからの手紙が来たことから、3人は新たな局面を迎えることになる。
感想(ネタバレあり): あのベントンが生きていた。いや、これは、そうではないのかなとは思ったけど、まさかなと誰もが否定していたことで、これを読んだ多くの人はどう思ったのだろう? とりあえずよかったと言うべきなのか?
この作品を読んでなぜかすごく最初のうち面白くなくて、もう読むのをやめようかと思ってしまった。凶悪犯などの犯罪の手口などが書かれていたり、正直気分がいいものではなかったので。こんなにこの作品って面白くなかっただろうか?と思っていたのだが、最後に解説を読んで納得した。今までは一人称で書かれていたのだ。今回は三人称で、だからケイの視点から描かれていない。そのため、おぞましい犯人の内面などに迫る書き方になっているのだ。今までもあまり気持ちのいい描写ではないものもあったものの、ケイの視点から描かれており、解剖だとかそういう面が多かったし、犯行もケイが想像をするというのがほとんどで生々しい描写はあまりなかったのだ。
それから、解説を読んでもうひとつ、えっ?と思ったことが…。なんとケイの年齢が40歳に逆戻りしているらしい。同時多発テロなどが起こったあとのことになっていて、時代的には本当なら60歳を超えるのだという。私も読んでいるときにそのイメージで読んでいた。そして、このシリーズが面白くないのもケイが検屍局長を辞めて、すでに隠居のような生活を送っているからに違いないと思い、このシリーズもこれで最後だろうとまで思ったのだが、どうやらそうではないらしい。この先もこのシリーズは出るのだろうか?
今回のように三人称を使ったり、狼男のようなちょっとおかしなキャラが延々と出てきたりするのを見ると、この先が面白くなるのか…私にはわかりかねる。元々この作品は犯人がどうだとか、犯罪がどうだとか、推理がどうだとかいう面よりも、ケイの人間関係などに着目をしていた。その意味で、今後ベントンとマリーノとケイの関係がどうなるのか? ルーシーがどうなるのかには確かに興味がないわけではないのだが、年齢を逆行するというわけのわからないことが行われたらしいことはすごくショックだ。だったら、時代を進ませなければよかったのではないかと思ってしまうのだが…。
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