私は、はっとする。なめくじがどんどん縮みはじめる。 反比例のように、巨大な悲しみが私のなかにあふれる。 口に出してみれば変わるかもしれないと思い、悲しい、 と私は声を出そうとするのだが、声は出てこない。 私のなかに溜まるばかりだ。 なめくじはどんどん縮んでいく。せっかく友達になれたのに! 花火はまだ上がっているのに! なめくじはやがて、光る粒のようになり、そして消えてしまう。 花火はいつの間にか静まっていて、あたりに見えるものはもうなにもない。 目が覚めたあと、いつものように夢のノートに書きつけをしていて、 これは自分のために記録するだけでなく、お前にも、 手紙で知らせなくてはと思ったのだ。
★みずうみ/いしいしんじ★
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