アトム そもそもお二人が会いはるのはいつ以来ですか? こちらがひやひやするくらい親しそうにお話になってるんですが…。
野坂 二年ぶりですかね。 僕はとにかく中島らもを推薦しちゃ、 いろんなところで怒られてるわけ。 『朝まで生テレビ』にも推薦したんですよ。 そうすると、出たのはいいけど四時間、一言もしゃべらない。 なのに、あとで「野坂さんはなんてフケの多い人だろうと思った」 とかエッセイに書いてるの。 それだけでおそらく五、六十万は稼いでるはず。 だから、今日は黒っぽい服は着てこなかった。
アトム えらい昔のことを気にしてはるんですね(笑)。
らも 野坂さんは…。
野坂 先生!
らも 野坂先生は…おれが土葬にしてやる。
アトム 突然また何を言い出すんですか?
野坂 いやーぁ、土葬っていうのはいいんですよ。 土葬した上に野菜を植えると、まったくの有機農法だからね。 僕の養分を吸った野菜は虫もつきませんね。
らも 虫もつかないくらいつまらない。
野坂 つまらない人生だったと思う。 もうちょっと虫がつきゃ、よかったんだけど。 大体男につく虫っていったら、なんなんですかね。
らも 思想。
野坂 えっ、シソウって死に顔のこと?
らも 違う。考え、イズムの、思想。
鮫肌 なになにイズムに取りつかれて人生を送ってしまうってことですか?
らも うん。
野坂 思う想うと書くのでしょ。 思想…ひとつ間違うと中毒になる。 で、中毒からまたひとつズレると今度は信仰になっちゃう。
らも 思想の砦の中で、ぬくぬくとしているヤツは、おれは嫌いだ!
野坂 嫌いだからどうしたっていうの?
アトム 僕らのツッコミにくいことを、野坂先生、 ぎょうさん言うてくれはりますね。
鮫肌 いつもここでツッコメなくて「そうですね」って 言うしかなかったんですよ(笑)。
らも 思想の砦の中で、ぬくぬくしているヤツは、おれは嫌いだ! 大嫌いだ!!
野坂 わかったって。おまえが嫌いでも、関係ないって、それは。 世の中は。
アトム 野坂先生、お優しいですね。
野坂 僕は優しいですよ。 とくかく怯えてるから。 みなさまに優しくしとかないと。 八方にお辞儀して「申し訳ありません」「どうもすみません」って。 例えば電話が鳴って受話器をとったとするでしょ。 なによりも初めに「すみません」って言いますからね。
アトム 「もしもし」の代わりに「すみません」ですか?
野坂 そう。人と会うと、まず「どうも申し訳ありません」。
らも 「すみません」じゃすまないことばっかりしてて。
★イッツ・オンリー・ア・トークショー/野坂昭如×中島らも★
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