ピアノなら「乙女の祈り」だが アプライト・ピアノを 弾くだけでなく ペダルをなめたり のこぎりで切ったり 突き倒したこともあった 白人女への 家庭内暴力のように へらへら笑いを浮かべて
最初のTVシンセの展覧会も見た 物置のような画廊で 中古の受像機に巨大な磁石を添えただけのもの 画像が歪んで 虹模様になる ロックフェラー財団の学芸員の前で パイクは もっともらしい説明をする へらへら笑いを浮かべて
受像機の自己増殖 白鳥よりは透明で ありのままの 無意味な世界を映す 画面の無意味 白南準の 黒いダダの虚無主義 月を映したヴィデオZENで 世界を騙る 西洋も東洋も超えて アリスの猫のように 身体が消えても のこる あの 神々のような へらへら笑い
「貧乏な国から来た 貧乏人 できるのは ひとを たのしませるだけ」
★さよなら ナム・ジュン・パイク/高橋悠治★
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