森「私の家は京都の花柳界にあって、 黙ってると私も祇園の舞妓さんになるんですよ。 ところが舞妓さんがいいとはちっとも思わなくて、 それより輪っかの入ったフランス人形みたいな衣装を着たかったの」
「(映画は)戦争が始まった年にやめたの。 映画に慣れてくると、毎日毎日同じような役でしょ。 町娘にしても、武家の娘でも、袖の持ち方や手の置き方なんかが変わるだけで、 ほとんど同じなの。何だかイライラしちゃって。それから歌手になった」
森「流行歌を唄って。それと『真白き富士の気高さを』なんていう健康的な歌も。 でも戦争中だったでしょ、戦地に慰問にも随分行ったり」
森「中国には二回行ったわ。それから東南アジアへ一回。 ボルネオ、セレベス、ジャワ。 シンガポールからインドシナ半島を北にのぼってペナンまで。 この時は八ヶ月くらいかかって」 「(空襲にも)遭いましたよ、何回も。東京で始まるよりもずっと前」
森「(戦争が終わると)進駐軍のキャンプ。 百八十度の転向。さっきまで日本の軍隊の前で唄ってたのに…。 空襲で東京の家が焼けちゃったので、京都に帰って、関西のキャンプ巡りですよ」 徹子「ご自分の中に抵抗がなかった?」 森「そんなことより、生きる方が先よ。食べなくちゃ」
★おしゃべり倶楽部/黒柳徹子×森光子★
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