山下「ニュートリオに時々来てもらって一緒にやってる時に、 『おじいさんの古時計』を菊地が持ってきてくれたんだっけ」
菊地「いや、僕が『古時計』を持って来たのは、 武田さんの追悼のデュオの時ですね。 『古時計』は「おじいさんが亡くなって、時計が残った」という歌だし、 「大きなノッポの」とか言って、武田さんにぴったりだと思ったんです」
山下「ああ、そうだった! その時から菊地はコンセプチュアルなことをやってたんだね」
菊地「お前も何曲か好きな曲を持って来い」って言われて、 それで持って行ったんすよ」
山下「それがとても良かったんだ。 その印象が強く残って、今度はトリオでも一緒にやろうと。 それがレコーディングに結びついて、重要なレパートリーになった。 ニューヨーク・トリオのレパートリーにもしちゃったもんね。 これ『ニューヨーク・タイムズ』で褒められたんだよ(笑)」
山下「ライブでも『古時計』の最後の音をバーっと伸ばしてて、 ドシンと終わるんだけど、「その音程が気になる」って言ったら、 小松と菊地とで顔を見合わせてニヤッと笑ってさ。 実はわざとベンドさせてたってことだろ?覚えてんだ(笑)。
菊地「そんなことありましたっけ(笑)」
山下「こっちは音程は確かなほうがいいって「じじぃ頭」だからさ(笑)。 「わざとベンドさせてんのになー」って顔で若者二人が目配せしてたんだよ(爆笑)。 なるほど、そういう奴らだなって。 あれはおれにとってはなかなかいい体験だったんだよ」
★花火を上げろ!菊地成孔のできるまで/山下洋輔×菊地成孔★
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