そもそも文学など、碌でもない人間が志す物だ。 金持ちのボンボンとか……少なくとも自分のような 工場とかで働いた経験のある人間がやるものなんかではない。 自分を完全に破滅させる方向に持っていかなければ、何も書くことなんて思いつかない。 のびのびと表現をしたいなあ、なんて考えているような余裕なんか持っていては駄目だ。 ゾッとするようなおぞましい自分。自分が忌み嫌う自分。それが小説を書く自分。 どうでもいい、つまらないことを何十枚にもわたって書ける自分だ。 そんな人間になるには、自分が「こうでありたい」という自分になってはいけないのだ。 あくまでも自分が軽蔑する人間になり切らなければならない。 自分をまるで与り知らぬ領域に持っていかなければ、 こうして無駄で面白くもなんともないことを饒舌にバカバカと書いたり出来ない。 そこまで苦労して、やっとまっとうな人間の半分くらいしか稼ぐことが出来ない。
★点滅……/中原昌也★
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