宿題

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2006年02月26日(日) 女たちのやさしさについて考えた/中原昌也
突然、そこで迷わずにズタズタに引き裂く。
ネクタイの不意をついて、隠し持っていたカッターを取り出して縦にスッと切る。
何度も切れ目を入れる。
「これは、誰から贈られたものだったっけかな」
本当はわかっているくせに、わざとプレゼントしてくれた人のことを思い出しはしない。
こうして、ネクタイがその人間の身替りになっただけのこと。
ようやく切れ目を得たことによって、ネクタイは細切れになろうとしていた。
大袈裟に鼻息を荒くして、両側を引っ張ると簡単にそれはボロボロに引きちぎれた。
恐らく、その作業の最中は、何とも快楽の表情であったに違いない。
あらかじめビデオカメラなどを準備して、撮影しておけばよかったのだ。
ネクタイ自身に罪はないけれど、仕方がない。
贈った主の顔面を、いま手にしたカッターでズタズタにするよりかは、いかにましなことか。
とりあえず、この瞬間はそれで済んだ。


★女たちのやさしさについて考えた/中原昌也★

マリ |MAIL






















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