パパは神様だ(神様がパパに化けているのかもしれない。) 「おまえに本物の写真機をあげよう」だなんて!
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これからは何もかも写真に撮って残せる。もうパリに帰ってもさみしくない。 田舎の風景をみんな持ち帰ることができるんだもの。 前だったら「これと、これと、これを撮って」と、パパに頼んでも、「もちろん、もちろん」 といわれるだけでちっとも撮ってもらえなかった。でも、もうこれからは自分で撮れる。
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僕は赤ん坊も好きだし、年上の子も好き。 きらいなのは同い年の馬鹿な子たち。
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去年は、レンズの蓋を開けた途端、写真機の前に走って行って、 自分の姿を透明ながら撮影することができた。 今日思いついたのは、同じ要領で、もしや夕食のとき話に聞いた、 透き通った幽霊の写真を撮れはしないかということだ。 それでジズーにシーツをかぶってもらうことにした。 レンズの前に立ってもらって、蓋を開ける。また閉める。 ジズーがどいたら、また蓋を開ける。 うまく幽霊の写真が撮れていますように。
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パパのお気に入りの秘書プリットが、沼の泥土の中を竹馬で歩けるか試しに行こうとしている。
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成長する自分に、ときどきひどく悲しくなる。 こんなに幸せで、若く、何の不安も抱かずに暮らせるのに、なぜこのままでいられないんだろう。 もっと若くたっていいとさえ思う。 ママンが「あなたはいつまでも私の赤ちゃんよ」というときの優しいまなざしをどう説明したらいいだろう。 永遠にそういってもらえたらどんなに素敵だろう。 幼い頃を思い出す。 夜眠ると、自分を守ってくれる幸せが逃げてしまいそうで怖かった。 手を握って、ママンが歌を歌ってくれているあいだも、 僕は喜んでいたのではなく、じつは声を殺して泣いていた。
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もしかすると近いかもしれない、と言っていたことが確実になった。 ついに宣戦が布告されたのだ! もし徴兵猶予になっていなかったら、9月4日には徴兵通知を受け取り ママンとパパとジズーとおばあちゃんを残して戦場に向かうことになっていたなんて、 どんなにつらいだろう。 パパはちょうど徴兵免除の年齢になった。ジズーも免除されている。 いまのところ僕たちはまだ4人一緒に暮らしていける。 そのことをもっと喜ばなくてはいけないのに…説明し難い。 僕にとってパパは、生まれたときから僕を守ってくれる何よりも偉大な力だった。 野原も森も障害も僕を抱いて通り抜け、僕はただ笑って身を任せてさえいればよかった。 なのに、頼りにしていたその人が今日力を失うのを見たのだ。 高く抱きかかえられていただけに、ひどく目まいがする。 …パパに怖いものがあるなんて、想像したこともなかった。 パパは戦争に脅えている。
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日当たりのよい広場でママンが僕に話しかける。僕は黙っている。 オレオについて今日みんなが話すことは、なんの意味も持たないと思うから。 僕は信じない。明日になったら信じるだろうか。とにかく今日は信じない。 もし死んでいるならば、彼は僕のそばにいるはずだし、もし生きているなら、 もう悲しむ必要はない。
★子供のまなざし/ラルティーグ★
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