尾形 (腕組みして)落語始めようかなあ(笑)
高田 いいねえ、いいよ。一人でいっぺんに全部できるんだもの。 男も女も、犬だって、タヌキまで出来るんだから(笑)。 タヌキのネタで一人芝居じゃ、十五分は辛いだろう(笑)。
尾形 辛い、辛い。持っていきようがない。
高田 落語だったら、こっちで人間になって、こっちでタヌキになれるもの。 タヌキになりっぱなしじゃない。「なんだ、お前は」って一応タヌキに突っ込めるから(笑)。
尾形 そう、それが一人芝居の場合はないんですよ。
高田 突っ込めないでしょ。そこが、落語の一人称と一人芝居の一人称の違いですよ。 落語だと、八っつぁんになってても、半分醒めて、八っつぁんを見てますからね。
◇
尾形 落語は寄席も含めた全部が虚構なのかもしれないですね。
高田 というか虚実皮膜というか。融通無碍なんだよね。 落語の場合は、いつでも落語を語ってる自分に戻れるから。 「お前さんあたしの腰巻き返しとくれ」「何言ってんだい、お前こそ、俺の猿股返せ」 「なんて、どっちもどっちの夫婦がいますからね」って、 正面切れば自分自身に戻れますからね。つまり、いつでも、現実というか素に戻れるんですよね。
◇
尾形 今年の目標というのは、強いて言えば、”友達を作る”。 これ、ここ何年来の目標なんですけど(笑)。
高田 そんなに友達が欲しいなら、今度、うちの談志師匠と飲みましょうよ。
尾形 師匠の物真似はけっこうするんですが。
高田 ああ、見た見た。うまいよねえ。
尾形 物真似はしないたちなんですが。
高田 人間の質が近いんだって。けっこう孤独で、一人で煮詰まっちゃう(笑)。 だから、一度談志師匠と飲みません?
尾形 何話せばいいんです?
高田 芸談。酔っぱらうと、最後は芸談ですね。
尾形 芸談はできないからなあ。
高田 いや、結局はバカっぱなし。
尾形 何度かは会ってるんだけど。
高田 じゃ、話はした?
尾形 うん。「どうも、どうも」って。
高田 それはただの挨拶でしょ(笑)。
尾形 でも、二回目に会ったときは「その節はどうも」。
高田 じゃあ、三回目が「あの節はどうも」で、次からは「毎度どうも」ってか?
尾形 よくわかりますね。
高田 お見通しよ(笑)。
尾形 だから、役作っていきます(笑)。
高田 「談志に会う人」。どんな役なんだ(笑)。
尾形 そういう料簡になりゃ、会える(笑)。 でも(談志の声色で)「ウゥ、その料簡が気に食わねえ」って(笑)。
高田 いきなり小言だよ。でも、ああいう人はいきなり懐に入っちゃえば楽なんですよ。
尾形 となると、どういう役設定にすればいいんですか?
高田 これだもん。友達できないよ(笑)。
★笑うふたり/イッセー尾形×高田文夫★
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