彼等が消え去った ずっと、ずっと、 ずっとあとになっても うたは街々に流れ続ける 人々は少しうわの空で 作者の名前も 彼が誰を想って心ときめかせたのかも 知らないままそのうたを歌い継いでいく だから時には言葉も変ってしまったり あるいは歌詞が分らなくなってただラララ、だけになったり 彼等が消え去った ずっと、ずっと、ずっとあとになっても うたは街々に流れ続ける もしかしたらいつか僕が消え去ったずっとあとになって ある日誰かがこのメロディをくちずさむ 悲しみを紛らわすため 幸福をかみしめるため 年老いた物乞いの生きる糧になり 年若い子供の子守唄になり 春の水辺におかれた蓄音機のうえで くるくる回るレコードに刻まれることもあるのかな 彼等が消え去った ずっと、ずっと、ずっとあとになっても うたは街々に流れ続ける 詩人達の軽やかな心と 少女を、少年を、ブルジョワを、芸術家を、 放浪者を 時には陽気に、時には悲しくするそのうた
★詩人の魂/シャルル・トレネ★
■宮沢章夫さんの富士日記2から。
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