<宮藤>ぼくがしりあがりさんの原作を読んでとくに衝撃を受けたのが 三途の川を挟んで生と死が別れてるところなんです。 「死」の世界から「生」の世界に戻るために「川を渡る」んじゃなくて 「さかのぼる」という発想です。そこにいちばんしびれました。 なんてすごいこと考える人なんだと思って。それを映画でもどうしてもやりたかったんですよ。
<しりあがり>映画でああいう解釈をしたのには驚きましたね。 原作ではぼかしてるんですけど。
<宮藤> 生と死、夢と現実の境目がわからなくなる、男と女もそうですけど、 ぜんぶ間があやふやな世界のなかで、最後にリアルっていうのはなんだ?っていうのを、 弥次さん喜多さんの2人が1個見つければいいや、って映画にしたかったんですよね。 もうひとつ原作を読んで思ったことは、弥次喜多の2人は、離ればなれになったとたんに 急にドラマチックになるんですよね。2人そろってるとドラマが起きない。 映画でもそれを意識しました。
<しりあがり>そうですね。2人ともドラマの傍観者みたいになっていっちゃうんですよね。
(ってことは、この2人がただ「いる」状態というのがもう完成された‥‥)
<宮藤>「幸せ」っていうことなんですよね。
★ほぼ日での対談/しりあがり寿×宮藤官九郎★
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