宇和川大兄、葉書が今朝来た。おつがさんが病氣だつてね。
切角君は慰めて可愛がってやる可しだ。
一番いい薬は呑氣と遊ぶと言う薬と思う。
君や僕は決して病氣にはなりつこなしだね
青山が巴里へ来たつてね。君からよろしく言つてくれ給へ。
何うだい巴里は、だんだん皆帰って行くね。淋しくなる許りだね。
しかし巴里に居る事は何より幸だ。
僕なんざはこんな田舎に落ちこんで何時になったら巴里へ出られるか分かつた事じゃない。
君から巴里の女へよろしく言つてくれ給へ。
9月十五日 田舎者藤田
裏──宇和川大臣?何大臣だへ左大臣かい、此間は二階で一寸御目にかかつたが、
僕も後で御話するつもりでたのが君が見えなくなってそれきり忙しくて
(巴里の女たちに取りまかれて)会えなかつた、惜しかつた。
宇和川左大臣 川島女大臣
★ヒコーキ野郎のフランス便り/藤田嗣治★
■これも宇和川さんへの葉書。1915(?).9.15日の消印。
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