タモリ 「Y字路って、どうできるんだろうなぁと考えちゃうんです。
東京の郊外のY字路なんて、ほんとに自然な成り立ちでできたと思うんですよ。
直行する道路とY字路の違いは…『ある一定のところまでは、目的は同じだ』
ということですよね? それから、少し別れるんですよ。
たとえば、目黒不動に行くのか、祐天寺に行くのか、と。
途中までは一緒で、あるところから別れる──
『おたく、目黒ですか?』『あぁ、祐天寺です』『途中まで一緒ですね』
と、おたがいにコミュニケーションを取ったりしながら
『やっぱり目黒不動に行くほうがいいのかなぁ』
と思ったりするわけでしょう? Y字路にさしかかるまでは一緒に進む。
そして、いよいよ祐天寺と目黒不動に別れるときに、ふたりは最終決定して、
『それじゃ』ってそれぞれの道を行くんだけど、Y字路ですから、
急には距離感は広がっていかないんだよね。 まだ、なんか、余韻を残しつつ。
余韻を残して別れてくっつうのがね、またよくて……。
直行する道路っつうのは、お互いに何の影響も及ぼさないでしょ?
わたしはこっち、あなたはそっち、と。おたがい、何のコミュニケーションもとらないし、
もう、ああ、これはまったく違う人だというような……。
でも、Y字路を見てると、なんか、今言ったようなことを思うんです。 そのへんの曖昧さとか、影響しあうところが、なんか想像するとおもしろい。
江戸時代からある道を調べると、Y字路も『右 大山/左 なんとか』
と書いてあったりする。道が別れるところまで一緒にきて、
いよいよここであんたとお別れ、ということになるんだけど……」
★Y字路談義。第8回、9回/横尾忠則★
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