女はスラブ学者、もっと正確には、マヤコフスキー研究家というふれこみだった。
ぼくの所属していたグループのメンバーとするには、かなり無理があった。
しかし彼女をことわらなかったのは、視覚的な理由からだったのだ。
そんなわけで我々は、彼女がイタリア共産党員であることも、
我が国の三〇年代のアバンギャルドの阿呆どもにたいする彼女の思い入れも、
いずれも西欧の軽薄さのせいにして、そう気には留めなかった。
もし彼女がファシストだと公言していたとしても、彼女に抱くぼくらの
欲情は変わらなかっただろう。彼女の魅力はまことに圧倒的だった。
★ヴェネツィア・水の迷宮の夢/ヨシフ・ブロツキー★
■この間のロシア絵本展でわぁと思った「マヤコフスキー」がこんな言われようを。
|