宿題

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2004年09月10日(金) 大尾のこと/田中小実昌
だが、げんに大尾は病人で、しかも、ひどい病気のようなのだ。

そんな大尾を、もし元気だったら、などとおもうわけがない。

そんなふうにおもう、おもえるのは、そこに大尾がいない、つまり物語のなかだけだ。

あのとき、ぼくは、大尾が元気だったら、なんておもいもしないし、

おもえもしなかっただろう。

げんに、そこに大尾がいて、ぼくといっしょにいても、

ぼくは、大尾とぼくの物語をつくるかもしれない。

だが、大尾とこうしているんだから、物語なんかつくらない、

つくれないといったこともあるにちがいない。

しかし、物語は、なまやさしい相手ではない。

なにかをおもいかえし、記録しようとすると、もう物語がはじまってしまう。


★大尾のこと/田中小実昌★

マリ |MAIL






















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