宿題

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2004年09月09日(木) 大尾のこと/田中小実昌
あの大尾が、あんな風に死んだ、ひどいもんだ…ぼくは、自分でかってにつくった、

それこそひどい物語を、ひどがっている。



そして、こういう物語には、たいてい、ぼく自身もいい子の役ででてくる。

いや、直接、ぼくはでてこなくても物語の世界を成立させている主人公だ。

また、ぼくの兵役物語の中で、ぼくが、得々として、初年兵という役をやっていたことも白状する。

初年兵は、コキ使われ、人間あつかいにされない、あわれな下女だ。

そして、ぼくは、人間あつかいにされない、兵隊のうちにいれてもらえない初年兵として、

逆に、兵隊の罪をなじり、兵隊のおろかさをわらった。



ところが、ぼくは、あわれな、しかし罪のない初年兵として、

兵隊のとき口がきけなかったぶんをとりかえすように、しゃべりまくっている。

また、そんなに、声高く、恥ずかしげもなくしゃべれるというのも、

ドラマの中の初年兵という役にすんなりなれているからだろう。

古参の兵隊だった人たちは、こうすんなりとはいくまい。


★大尾のこと/田中小実昌★

マリ |MAIL






















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