つまり、こうした人もやはり何が何でも傷つきたくない人、
他人の自分に対する「嫌い」に対して過敏なほど自己防衛する人です。
彼(女)は他人の仕草や言葉や心持ちに対して敏感であり、他人に過剰な期待をする。
そこで、ほぼ常に他人に裏切られることになる。それは自分がひどく傷つくことです。
そこで、あるときを境に、傷つかないトリックを見いだした。
それは、すべての他人にまったく期待しないこと。
すべての他人をあらかじめ「嫌っておく」ことです。
中学生や高校生ならみんな考えていることです。
ですから、大人の中でも小説家や芸術家あるいは哲学者など社会的発育が未発達な人に、
ママ尾てい骨のようにグロテスクなかたちで認められる。
ふたたび、ため息。中学生レベルの精神構造を維持している私は、
なんと一心不乱にこうした技巧を身に付けることに勤しんできたことか!
そして、それをわれながら惚れ惚れとするほど自家薬籠中のものにしてきたことか!
★ひとを<嫌う>ということ/中島義道★
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