宿題

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2004年02月22日(日) 千利休/赤瀬川原平
お茶のことなど何も知らないのに、

こちらはただ冗談をエネルギーとして路上を低く歩きながら、

気がついたら利休のお茶室の床下に潜り込んでいた、というのが現状である。

もちろんお茶室の中へなどはいれない。畏れ多くてはいろうとも思わない。

ただ自分たちがたどり着いたこの同じ場所に、利休のお茶があることを知ったのである。

─そんな時(千円札の事件はもう起こった後)、
草月流の勅使河原宏から映画『秀吉と利休』の脚本を頼まれて─

うーぬ、と唸りながら頭上を見上げた。お茶室の床板である。電話の主は上にいるのだ。

私はその電話に、「OK」と答えて電話器を置いた。

そして薄暗がりの中で床板を外し、肩で畳を押し上げて、

床下から千利休のお茶室に上がり込んでいったのである。

お茶室には躙り口というものがある。

訪れるものは刀を外し、身を縮めて低い小さな躙り口から中へはいる。

しかしさらに低く、床下から畳をこじ開けての躙り口はまだ考案されていない。

おそらくはこれがはじめてのことである。


★千利休/赤瀬川原平★

マリ |MAIL






















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