「新聞といっても、気ままな発行です。毎日出しているわけではありません。
極端な話、出さなくても、いっこうに構わないのです。
私としては、ニュース・ペーパーというより、日記を書き続けているつもりなのです。
この小さな町で起きた大きな出来事、小さな出来事、それらを取材して記録する、それだけです。
町のための新聞、町の記録です。これが私の仕事。
さっきもお話したとおり、私はファンタジーを歌うのを辞め、
身のまわりの現実を記録する係に転進したわけです」
◇
不意に私は、もし幸福というものが見たいのなら、いま確かにここにそれがある、と思った。
なぜそう思うのか自分でもわからなかった。分からないけれど、それでもよかった。
とにかくここは、世界でいちばん幸せな屋上なんだと、
私は誰かに電報でも打ちたいような気分だったのである。
★Bolero 世界でいちばん幸せな屋上/吉田音★
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