それで最初の怖い怖くないの話に戻って、私自身はどうなのかと言うと、
奈緒子姉や幸子姉と同じように怖がってもよさそうなものだけれど、
実際は怖くなくて、たぶん三匹の猫たちがこの家の中を歩き回っていることが
私の体の延長のような役割を果たしてくれているかららしい。
夜、私一人で一階の居間にいるときに、二階でミケが窓から外を眺めているとか
窓の敷居に寝そべっているとか、南の縁側をジョジョがとってんとってん歩いて
風呂場まで行ったというようなイメージが浮かんでくるだけで、
この古い家の夜が子どもの頃に感じた物陰に何かが潜んでいるようなのと違った
見通しがいい家のように思えてくる。
★カンバセイション・ピース/保坂和志★
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