久留米のれんたい、そして中支からラブレターが届きます。
と、いっても軍りつきびしいから、内容は暑中見まいとさしてかわりません。
「早くへんじをあげなさい」りちぎな母はうるさく姉をせっつきます。
ところが無類のフデぶしょうでため息と共に、
やたらとびんせんのかき損じの山をきずくだけで一日のばしです。
ついに見かねてヒットラー(※家族内でのお母さんのあだ名)が代返を決行。
アズマ(※お姉さんの旦那さん)と母との間にラブレターが、せわしく往復し、
やがて彼はヒシと母のレターの束をむねにビルマに発って行くことになります。
─中略─
その頃です。義兄がインパール作戦で玉砕したのは。
もどってきた姉の顔。とっても見られません。
「いや信じないワ。ぜったい帰ってくる。かく信があるもの。あたしいつまでも待ってる!」
朝日新聞からの内報ですからまさかまちがい無いと思うけど
本人がああ言ってるのにまわりで余りなげくのも変なので、
この件はひとまずおあずけとなりました。
★サザエさん うちあけ話/長谷川町子★
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