ぼくがねこぎらいからねこ好きになったのも、
そんな単純なきっかけで廻転ドアをぐるりと一廻りして、だったのでした。
つまり、ぼくは、ある日突然にたいへんねこ好きなひとをすきになる破目におちいり、
ふたりで焼きたての手焼きせんべいみたいなじぶんたちの恋愛をパリパリ、
パリパリと音を立てて夢中で食べているうちに、ふと気づいたら、ぼくは、いつのまにか、
たいそうねこ好きになっている自分をみつけることになった、というわけなのです。
ずっと以前にぼくは、ながいあいだ、新聞の投稿欄に
次のような鮮明なはじまりをもつ文章を投稿することを、熱っぽく夢みていたひとりでした。
全国のねこぎらいよ!
この旗の下に集まれ!
全日本反猫同盟をつくろう!
結局ぼくは、それ以上の言葉をどうしてもおもいつけずに、
その投稿を断念せざるをえなかったのですが、おおくのねこぎらいが
ねこぎらいになる直接の原因おもなるほとんどがそうであるように、ぼくもまた、
ねこたちによる夕食のおかずの焼き魚を押し込み強盗されてために、
ねこたちにふつふつたる確執をかもしていたのでした。
★ねこに未来はない/長田弘★
|